高収入な職業といわれる医師。しかし、20代のうちは思うような収入が得られず、転職をしようか悩んでいる医師もいるのではないでしょうか。
ここでは、20代医師の平均年収を解説します。また、20代医師の年収が低い理由や、その後のキャリアアップについても解説していきます。
キャリアアップや転職を考えている人は、この記事を読んで自身のキャリアプランを立てる際の参考にしてください。
20代医者の平均年収はどれくらい?
20代医師の平均年収はいくらになるのでしょうか。
厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査(令和4年度)」によると、20代医師全体の平均年収は約462万円です。
男女別でみると男性医師は約511万円、女性医師は458万円となっています。
医師の年収は診療科、勤務形態などによって大きく変わりますが、20代医師の場合は研修医として働く期間が長くなるため、平均してみると年収が低くなる傾向にあります。
次に診療科や年齢によって、年収がどのくらい変わるかを解説していきます。
【診療科別】勤務医の平均年収の違い
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った、「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、診療科別の平均年収は下表の通りです。
診療科 | 平均年収 |
脳神経外科 | 約1,480万円 |
産科・婦人科 | 約1,466万円 |
外科 | 約1,374万円 |
麻酔科 | 約1,355万円 |
整形外科 | 約1,290万円 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 約1,267万円 |
内科 | 約1,247万円 |
精神科 | 約1,230万円 |
救急科 | 約1,215万円 |
放射線科 | 約1,103万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 約1,079万円 |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構|勤務医の就労実態と意識に関する調査
20代だけではなく全年齢の平均年収ではありますが、平均年収の高い診療科は脳神経外科や産科・婦人科、外科などが挙げられます。
外科や産科・婦人科は手術など一刻を争う施術が多いことから、年収が高めに設定されています。そのため、20代の医師でも高収入が目指せる科であることが予想できます。
年収が比較的低い眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科においては、手術や緊急対応の少なさから年収が低くなっていると考えられます。
しかし、同じ診療科でも勤務形態や勤務地によっては年収に差が出る可能性があります。キャリアアップで転科を考えている場合は、勤務形態や勤務地も含めて検討するとよいでしょう。
【年齢別】勤務医の平均年収の違い
医者の年収は、年齢によっても異なります。
厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査(令和4年度)」をもとに、勤務医の年齢別の年収を算出しました。
年齢 | 年収(男性) | 年収(女性) |
~24歳 | 約475万円 | 約421万円 |
25~29歳 | 約777万円 | 約666万円 |
30~34歳 | 約1,241万円 | 約1,084万円 |
35~39歳 | 約2,099万円 | 約2,083万円 |
40~44歳 | 約2,661万円 | 約2,116万円 |
45~49歳 | 約3,423万円 | 約2,839万円 |
50~54歳 | 約3,405万円 | 約3,426万円 |
55~59歳 | 約3,466万円 | 約2,571万円 |
60~64歳 | 約3,467万円 | 約3,631万円 |
65~69歳 | 約3,093万円 | 約1,586万円 |
参考:厚生労働省|賃金構造基本統計調査(令和4年度)
*「規定内給与額×12ヶ月+年間賞与・その他特別給与額」で算出
医学部を卒業するのは早くて24歳で、卒業後は研修医として2年間勤務します。その間の年収は、男女ともに400万円台で、医師の中では年収が低い時期です。
しかし、研修期間を終え、専門領域を学ぶ専攻医になる20代後半からは年収が上昇します。
また、30代以降になると専門医資格を取得し、自分の専門領域で活躍できるようになるため、年収が1,000万円を超えてくる人もいます。
30代後半からは役職に就いたり、開業したりする医師が増えるため、男女ともに年収が大幅に増える傾向です。しかし、女性の場合は結婚や出産といったライフステージの変化の影響が大きく、男性よりも500万円ほど年収が低くなっています。
このように、医者の年収は、年齢によって大きく変化します。20代の頃は年収が低いと感じるかもしれませんが、経験と実績を積むことで将来的には高収入を得られる可能性が高くなります。しかし、年収だけでなく、やりがいやワークライフバランスも考え、自身のキャリアプランを立てていきましょう。
20代医者の年収が低い理由
20代医者の年収が低い理由は、主に以下の2つです。
- 研修医や専攻医としての勤務期間が長いこと
- 医者としてのキャリアが確立されていないこと
医師は医学部を卒業後、2年間は研修医として勤務します。この間は、病院によって異なりますが、月収約30万円から40万円で、医師の中でも低めの給与に設定されています。また、研修医期間はアルバイトが禁止されているため、副収入を増やすことができず、年収が低くなる傾向にあります。20代後半になると収入アップが見込めますが、専門医取得に時間を使うためアルバイトができなかったり、当直やオンコールの対応が増えてしまったりと副収入を得るための時間が少ないことも年収が低くなる要因と考えられます。
医師はさまざまな経験を積むことや、専門医資格を取得することで年収が上がっていきます。しかし、20代の医師はまだ医師免許を取得したばかりで、経験や専門医としての臨床経験が不足しているため、年収アップが難しいとされています。また、資格の取得も30代近くになってから取得することが多いので、20代の年収に影響を与えることが少ないのも年収が低い要因といえるでしょう。
20代医者のこれからのキャリアプランの考え方
20代医師の年収が低い理由を見てきましたが、それは一時的なものであり、将来的には高収入になる可能性が高いです。
しかし、20代以降で年収を上げるためにもキャリアプランを考えておくことが大切になります。例えば、以下のようなキャリアプランが例として挙げられます。
- 20代後半:医師としての経験を積む・専門医資格の勉強に励む
- 30代:専門領域のスキルを磨きながら、若手の指導やマネジメントの経験も積む
- 40代:さらなる年収アップのために転職か開業かを考える
- 50代:慣れた勤務地で定年まで勤めあげる、もしくはセカンドキャリアを考える
特に20代は今後の医師人生において、大切な土台をつくる時期です。将来、医師としてどうなりたいか目標を考えておくとよいでしょう。
将来の目標とは、例えば、開業医になる、家業の病院を継ぐ、役職に就く、などが挙げられます。将来どうなっていたいかを想像できない場合は、周りの先輩に聞いてみるもの一つの手です。
自分にとって理想のキャリアを考えてみましょう。
20代医者のキャリアの選択肢
今後のキャリアプランを考える際には、医師としての選択肢を知ることも重要です。医師としてのキャリアは主に以下の3が挙げられます。
- 勤務医
- 開業医
- 産業医
それぞれの働き方やメリット・デメリットを紹介します。将来のキャリアプランを考える際の参考にしてください。
勤務医
勤務医とは、病院やクリニックなどの医療施設に勤務する医師のことです。勤務先には、大学病院や公立病院、民間病院などがあります。
勤務医として働くメリット・デメリットは以下の通りです。
【勤務医として働くメリット】
- 専門医資格の取得や研究活動に有利な環境が整っている場合が多い
- 多くの症例や難症例に触れることができる
- 先輩医師や同僚医師からの指導や助言を受けることができる
- 診療を支援するさまざまなスタッフと関わることができる
- 病院の規模や地域によっては、福利厚生や待遇が充実している場合がある
【勤務医として働くデメリット】
- 勤務時間が不規則で長くなる場合が多い
- 開業医と比べて年収が低いケースが多い
- 働き方や診療方針に制限がある場合がある
勤務医は専門性や経験を高めることができる一方で、労働環境や収入に不満を感じることもあります。勤務医として働く場合は、自分の目標やライフスタイルに合った病院を選ぶことが重要です。
開業医
開業医とは、自分で病院や診療所を開設し、経営者兼医師として働く医師のことです。医院の開業には、自分で地域を選んで開業する「新規開業」と、親族や第三者から経営を引き継ぐ「継承開業」の主に2つのパターンがあります。
開業医になるメリット・デメリットは以下の通りです。
【開業医として働くメリット】
- 働き方や診療方針を比較的自由に決めることができる
- 勤務医に比べて年収が高くなる可能性がある
- 地域医療に貢献できる
- 患者との信頼関係を築きやすい
【開業医として働くデメリット】
- 経営や医療行為に関する責任やリスクが大きい
- 開業資金や設備投資が必要
- 人材の確保や教育が難しい場合がある
- 大学病院などと比べて対応できる症例の幅が狭くなる場合がある
開業医は、ワークライフバランスを考えて働くことができますが、経営や設備投資などの費用面での課題も多いです。勤務医と比べて、大規模な手術や難しい症例を扱うケースが少ないため、スキルアップが難しいのもデメリットといえるでしょう。
産業医
産業医とは、企業や団体に所属し、従業員の健康管理や健康相談を行う医師のことです。産業医になるには医師免許ほか、日本医師会の産業医研修を受講する必要があります。
産業医は従業員の心身の健康を保持、増進するのが主な役割のため、勤務医や開業医とは違い、問診としての指導や助言が多くなります。
産業医として働くメリット・デメリットは以下が挙げられます。
【産業医として働くメリット】
- 勤務時間や休日が規則的
- 給与や福利厚生が充実している場合が多い
- 予防医学や産業医学の知識やスキルを身につけることができる
- 勤務企業が変わっても馴染みやすい
【産業医として働くデメリット】
- 臨床とは違う知識を身につける必要がある
- 雇用が不安定になりやすい
産業医は安定した勤務環境や待遇を得ることができますが、臨床医とは違った知識が必要になるため、知識やスキルを得るのに時間がかかる点がデメリットとして挙げられます。
また、雇用が不安定になりやすいため、専業産業医として働くことが難しい可能性があります。複数の企業で産業医を兼任する必要も出てくるでしょう。
まとめ
20代医師の平均年収や年収が低い理由、キャリアプランの考え方について解説しました。
20代医師は、研修医期間があることや医師としての経験が少ないことが理由で年収が低くなる傾向です。年齢とともに増加する傾向が高いですが、さらなる年収アップのためには将来的なキャリアプランを考えておく必要があります。
医師としてのキャリアには、勤務医、開業医、産業医などはさまざまな選択肢があります。自分にあった働き方を考え、キャリアプランを構築していきましょう。
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