麻酔科医の平均年収は約1,335.2万円で、他の診療科の医師の平均年収と比べて比較的高いとされています。
本記事では、麻酔科医の仕事内容を踏まえ、麻酔科医の平均年収が高い理由や麻酔科医が年収を上げるための方法について解説します。麻酔科医へ転科を検討している方や、これからさらにキャリアアップをしたい方や年収を上げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
麻酔科医の平均年収
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、麻酔科医の平均年収は約1,335万円です。医師全体の平均年収1,261.1万円と比較してみても、比較的高いといえます。
平均年収 | 1,335.2万円 |
参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
他の診療科に比べて平均年収が比較的高い理由は、麻酔科医の業務上、高度な医療技術・知識が求められる場面が多いためです。また、麻酔科医の不足も平均年収が高い理由の一つになります。
麻酔科医と他の診療科との平均年収の違いは?
前述の調査によると、麻酔科医の平均年収は、脳神経外科、産科・婦人科、外科に次いで4番目に高いです。診療科によって年収が異なる理由は、診療科ごとに業務内容や勤務時間、求められる技術・スキルが異なるためです。
診療科 | 年収 |
脳神経外科 | 1,480万円 |
産科・婦人科 | 1,466万円 |
外科 | 1,374万円 |
麻酔科 | 1,335万円 |
整形外科 | 1,289万円 |
呼吸器科 | 1,267万円 |
消化器科 | 1,267万円 |
循環器科 | 1,267万円 |
内科 | 1,247万円 |
精神科 | 1,230万円 |
小児科 | 1,220万円 |
救急科 | 1,215万円 |
その他 | 1,171万円 |
放射線科 | 1,103万円 |
眼科 | 1,078万円 |
耳鼻咽喉科 | 1,078万円 |
泌尿器科 | 1,078万円 |
皮膚科 | 1,078万円 |
参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
診療科別で平均年収を比べると、脳神経外科、産科・婦人科のみ1,400万円を超えています。続く外科、麻酔科は1,300万円を超えており、整形外科や呼吸器科、消化器科や循環器科などは1,200万円台です。最も平均年収が低いのは、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、皮膚科で1,078万円となっています。
基本的には、内科系の診療科よりも外科系の診療科の方が、比較的年収が高い傾向です。それは、緊急手術など、命に直接関わる治療が多いことや、長時間の手術によって勤務時間が長くなりやすいことが要因として挙げられます。
麻酔科医はなぜ年収が高い?
麻酔科医の年収が高いのは、麻酔科医の「人員不足」が関係しています。需要に対して、医師の人員不足が起きる診療科の給与は高くなります。なぜなら、給料を上げることで求人しやすくなり、人員確保がしやすくなるからです。このような背景から麻酔科医の平均年収が上がりやすい傾向にあります。では、なぜ麻酔科医の人員不足は起こるのでしょうか。理由は以下の3つが挙げられます。
① 麻酔科医の定数
医療機関では、麻酔科医の定員数が固定されています。定員数が少ない医療機関では、1〜2名の施設もあります。そのため、麻酔科医の業務を少ない人数で対応する必要があるため、マンパワーが足りなくなることもあるでしょう。
② 麻酔科医の業務の特性
麻酔科医の業務は、手術中の患者の痛みを和らげ、生命を維持する重要な役割です。そのため、豊富な専門知識が求められ、スキル面においても高い技術が必要とされます。また、麻酔科医は手術のたびに必要となるため、深夜に緊急呼び出しがあったり、手術が長時間に及んだりして、心身ともに負担がかかる場合もあります。
③ 女性医師が麻酔科医としてキャリア形成しづらい
たとえば、子どもを出産後に仕事復帰しようとしても、保育所や託児所が見つからず、上手く復帰できないことがあります。また、麻酔科医は当直が多いため、仕事と育児・家事を両立させることが難しいこともキャリア形成がしづらく、麻酔科医全体の数が担保されない要因のひとつといえるでしょう。
麻酔科医の仕事内容
麻酔科医の主な仕事内容をご紹介します。主な仕事内容は、以下の通りです。
主な仕事内容 | 詳細 |
術前における回診 | 手術前にはさまざまな事前準備が必要です。当日の手術内容を確認し、手術に対する同意書を患者からもらうために、患者とその家族に手術内容を説明します。その際に確認すべきことは、麻酔による合併症を起こした血縁者がいないかどうかです。また、患者自身の疾患・合併症、健康状態を確認しなければなりません。担当医や病棟看護師とも連携し、手術日前日の過ごし方や手術開始時の注意点なども共有します。 |
術前における麻酔の準備 | 手術前に患者を診察した際の情報と、担当医から共有してもらった情報をもとに、麻酔一式を準備します。また、手術時に使用する気管チューブや咽頭鏡、麻酔器などの準備・点検も行います。 |
麻酔の実施 | 手術前に手術内容および麻酔方法を再度確認し、麻酔前の投薬を行います。手術が始まってからは、患者の生体情報(心電図・心拍数・呼吸数・酸素飽和度・血圧など)を確認しながら麻酔量と投薬スピードを調整していきます。 |
術後における回診 | 手術後は、患者の健康状態を確認し、必要に応じて看護師や担当医に指示を出します。 |
麻酔科医の仕事は主に、術前回診、麻酔の準備・実施、術後回診の4つで、手術中以外にも手術前後の患者の容体管理もあるため、仕事の幅が広いことが特徴といえます。
麻酔科医の労働環境
麻酔科医の労働環境は、激務といわれています。その理由は、患者の容体に合わせて麻酔のかけ方を調整し、容体の急変が起きても冷静かつ迅速に対処するスキルが求められほか、予定されている手術に加え、突発的な緊急手術などに対応しなければならないためです。そのため、日直よりも当直業務が多く、深夜帯に業務を行うこともあります。
忙しい診療科ではありますが、その分年収も高いという意味では、やりがいのある診療科のひとつといえるのではないでしょうか。
麻酔科医が年収を上げるには
麻酔科医が年収を上げる方法はさまざまです。主な方法は以下の通りです。
- 資格を取得する
- アルバイトをする
- 転職をする
- フリーランスになる
資格を取得してキャリアアップしながら年収を上げる方法や、アルバイトをして労働時間を増やしながら年収を上げる方法もあります。また、稼ぎやすい雇用形態や地域に転職したり、フリーランスとして自由な働き方をしたりしながら年収を上げる方法もあるでしょう。
資格を取得する
資格を取得するとは、認定・専門・指導の資格を得ることです。麻酔科医として取得できる資格の詳細は、以下の通りです。
資格 | 概要 |
麻酔科認定医 | 厚生労働省が認めた麻酔科標榜資格を有し、かつ日本麻酔科学会が規定した審査に合格した医師が得られる資格です。 |
麻酔科専門医 | 以下のすべての条件を満たす麻酔科医に与えられる資格です。
● 麻酔科認定医資格取得後3年以上が経過し、麻酔関連業務に従事している ● 麻酔科認定病院で麻酔の臨床業務に1年以上従事している ● 所定の臨床業績、研究業績がある |
麻酔科指導医 | 以下のすべての条件を満たす麻酔科医に与えられる資格です。
● 麻酔科専門医資格取得後、麻酔関連業務に4年以上継続して従事している ● 今後も継続して麻酔科関連業務に従事することが明らかである ● 指導医のもとで1年以上麻酔科臨床業務に従事し、指導実績がある |
麻酔科医は、医療現場の研修で臨床経験や臨床知識を高めながら段階的に資格を取得することで、キャリアアップできます。キャリアを積み重ねることで、常勤麻酔科医や研究者、大学院での指導医などになれます。キャリアアップをしていくことで、必然的に年収も上がりやすくなるでしょう。
アルバイトをする
アルバイトとは、数時間もしくは数日単位で、スポットで働く形態のことです。麻酔科医のアルバイトの場合、日給8〜12万程度が相場といわれています。
たとえば、日給8万円のアルバイトで月20日稼働を1年継続した場合、日給8万円×20日稼働×12ヶ月=およそ1,920万円稼げます。日給12万円のアルバイトの場合は、12万円×20日稼働×12ヶ月=およそ2,880万円稼げる計算になります。
麻酔科医の平均年収である1,335万円と比較すると、最高で約1,500万円程度収入をアップできる可能性があるといえるでしょう。
ただし、麻酔科医の仕事の特性上、当直がメインとなり、オンコールで緊急対応を任される場合があります。また、スポットのアルバイトの場合、医療機関側の都合で突然雇用が終了する場合もあるため、収入が安定しない可能性があるでしょう。
転職をする
麻酔科医が転職をする場合、経営形態が異なる病院に転職したり、都市部から過疎地域の病院に転職したりして、年収を上げる方法があります。以降でそれぞれについて詳しく解説します。
年収が高い職場に転職する
経営形態 | 年収 |
医療法人 | 1,443万円 |
個人 | 1,414万円 |
その他の法人 | 1,406万円 |
公的 | 1,353万円 |
公立 | 1,347万円 |
社会保険関係団体 | 1,280万円 |
国立 | 882万円 |
学校法人 | 739万円 |
参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、経形態としては医療法人、個人、その他の法人の順で平均年収が高く、いずれも平均年収1,400万円を超えています。一方で、平均年収が低いのは、国立や学校法人であり、いずれも1,000万円を下回る結果となっています。
このことから、個人や医療法人で経営している病院やクリニックに転職することで、年収アップが期待できるでしょう。具体的には、麻酔科医の平均年収1,335万円から80〜100万円程度年収をアップできる可能性があります。
年収が上がりやすい地域に転職する
前述の調査によると、年収が高くなると予想される職場は、政令指定都市・東京23区外や過疎地域であると推定されます。
地域 | 年収 |
政令指定都市・東京23区 | 1,137万円 |
政令指定都市・東京23区外 | 1,314万円 |
参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
政令指定都市・東京23区とそれ以外の地域を比べてみると、地方は177万円ほど平均年収が高い傾向にあります。その理由としては、地方は医師不足に陥りやすいため、給料水準が都心部と比べて高く設定されやすいからです。
また、同じ地方でも過疎地域は医師不足が深刻化しやすいため、平均年収がさらに高くなる傾向にあります。
地域 | 年収 |
過疎地域外 | 1,247万円 |
過疎地域 | 1,428万円 |
参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
都心部は医療機関が充実しており、医師の数が多いため、平均年収が下がりやすいでしょう。そのため、都心部で働いているなら、地方への転職を考えることで年収が今よりも高くなるかもしれません。
フリーランスになる
フリーランスの麻酔科医になると、時間の自由がききやすくなります。そのため、スポットのアルバイトで仕事を入れることで、常勤医より稼ぎやすくなるケースがあります。麻酔科医は仕事の特性上、ハードといわれますが、フリーランスであれば契約前の段階で採用側と相談することで、融通をきかせることができるかもしれません。
たとえば、勤務日を調整することで残業を減らすことや、オンコールや当直なしで勤務することも事前に相談できます。このように、フリーランスになることで時間の自由がききやすくなるため、プライベート時間を充実させたい人にはおすすめの働き方といえるでしょう。
まとめ
麻酔科医の平均年収は、脳神経外科、産科・婦人科、外科に次いで4番目に高いです。他の診療科と比べても平均年収が比較的高い理由は、麻酔科医の人員不足により、給料水準が高い傾向にあるためです。
また、麻酔科医が年収を上げる方法は、資格を取得してキャリアアップをする、アルバイトをする、年収が高くなりやすい経営形態や地域に転職する、フリーランスになるなどが挙げられます。
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