日々多忙を極める医師の中には、忙しくない科への転科や転職を考える方もいるかもしれません。しかし、どの科が忙しくないのか、実際にはわからないという医師も多いのではないでしょうか。
本記事では、医師が忙しくない科や、ワークライフバランスを確保するための方法について解説します。これから転科や転職を検討し、ワークライフバランスを確保したいと考える方はぜひ参考にしてみてください。
医師が忙しくない科はある?
診療科によって、医師の業務が忙しくないとされている科はあります。
今回は、労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をもとに、以下の項目に関するデータを集めました。
- 1週間あたりの勤務時間
- 年次有給休暇取得日数
- 当直日数
- オンコール回数
忙しさにはさまざまな尺度があるため一概には言えませんが、それぞれのデータを見ることで、忙しくない科が判断できる可能性があります。転科や転職などを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
【1週間あたりの勤務時間】医師が忙しくない科
医師の1週間あたりの勤務時間を診療科ごとにまとめると、以下のようになります。
診療科 | 勤務時間 |
精神科 | 38.4時間 |
内科 | 43.4時間 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 44.3時間 |
麻酔科 | 45.8時間 |
その他 | 46.0時間 |
放射線科 | 46.1時間 |
整形外科 | 46.8時間 |
産科・婦人科 | 49.4時間 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 49.4時間 |
小児科 | 52.0時間 |
外科 | 52.5時間 |
脳神経外科 | 53.3時間 |
救急科 | 54.0時間 |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、1週間あたりの勤務時間では、精神科が最も勤務時間が少なく、唯一40時間を下回っています。次いで内科、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科、麻酔科と続き、大半が40〜49時間程度の労働時間になっています。
50時間以上の勤務時間になっている診療科としては、小児科、外科、脳神経外科であり、最も勤務時間が多いのは、救急科の54.0時間です。
外科系の診療科は手術が長丁場になることもあり、勤務時間が長くなってしまう傾向にあります。また、救急科も病院に搬送されてきた患者の診療を行うことに加え、実際に救急医が現場に駆け付けることもあるため、勤務時間が長くなりやすい診療科です。
【年次有給休暇取得日数】医師が忙しくない科
7日以上年次有給休暇を取得している割合について、診療科ごとにまとめると、以下の通りになります。
診療科 | 7日以上年次有給休暇を取得している割合 |
精神科 | 35.4% |
産科・婦人科 | 35.4% |
麻酔科 | 33.4% |
放射線科 | 29.9% |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 28.8% |
その他 | 28.2% |
小児科 | 26.4% |
内科 | 26.1% |
整形外科 | 24.8% |
外科 | 23.9% |
脳神経外科 | 22.7% |
救急科 | 22.2% |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 20.9% |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
前述の調査によると、年次有給休暇を7日以上取得している割合が最も多いのは、精神科と産科・婦人科で35.4%。次いで麻酔科、放射線科、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科と続きます。一方で、7日以上の年次有給休暇取得日数が最も少ないのは、呼吸器科・消化器科・循環器科で20.9%です。
上記の年次有給休暇の取得率はあくまでも目安で、勤務先での雇用形態や勤務時間などによっても異なります。そのため、取得率の高さがその診療科の忙しさに直接関係しているとはいえませんが、実際に転職・転科を考える際のひとつの指標にはなるでしょう。
【宿直】医師が忙しくない科
宿直回数の割合を診療科ごとにまとめると、以下の通りになります。
診療科 | 宿直がある割合 |
放射線科 | 40.4% |
その他 | 49.9% |
麻酔科 | 56.9% |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 58.9% |
内科 | 66.6% |
整形外科 | 68.9% |
産科・婦人科 | 70.0% |
小児科 | 71.7% |
外科 | 73.9% |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 74.1% |
精神科 | 75.0% |
脳神経外科 | 78.0% |
救急科 | 94.4% |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
前述の調査では、勤務医の1ヶ月あたりの宿直回数の平均割合をまとめています。1ヶ月あたりの宿直回数の割合が最も少ないのは、放射線科で40.4%。次いでその他、麻酔科、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科と続きます。一方で、宿直回数の割合が最も多いのは救急科で94.4%です。
宿直や日直は、患者数の多い診療科で多くなる傾向です。また、時間を問わず対応が求められる産科・婦人科、救急科でも宿直・日直の回数が多くなるケースがあります。
【オンコール】医師が忙しくない科
4回以上のオンコール回数の割合を診療科ごとにまとめると、以下の通りの結果が出ました。
診療科 | 4回以上のオンコール回数の割合 |
救急科 | 3.4% |
放射線科 | 7.3% |
精神科 | 8.5% |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 15.3% |
整形外科 | 15.9% |
内科 | 17.9% |
小児科 | 20.6% |
その他 | 20.8% |
麻酔科 | 23.0% |
外科 | 29.0% |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 30.9% |
産科・婦人科 | 31.3% |
脳神経外科 | 36.7% |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
前述までの調査によると、4回以上のオンコール回数の割合が最も少ないのは救急科で3.4%。次いで放射線科、精神科と続きます。一方で、オンコール回数の割合が最も多いのは脳神経外科で36.7%です。
産科・婦人科では、妊婦の容体にすぐに対応する必要があるため、宿直はもちろんオンコールも多くなる傾向にあります。また、一番オンコールが多い脳神経外科は、救急搬送の患者の対応が多いことが理由のひとつに挙げられるでしょう。脳の病気は一刻を争うことになるため、緊急手術の対応が多いのも理由です。
オンコール回数の割合も、年次有給休暇の取得率や宿直同様に勤務先や雇用形態などによって変動するため、診療科の忙しさのみが影響しているとは断定できません。
医師の忙しさと年収の関係性
医師の忙しさと年収には、どのような関係があるのでしょうか。結論は、忙しさと年収の高さは必ずしも比例しません。こちらも労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をもとに、診療科ごとの年収と1週間あたりの労働時間を以下にまとめました。
診療科 | 年収 | 労働時間(1週間あたり) |
脳神経外科 | 1,480万円 | 53.3時間 |
産科・婦人科 | 1,466万円 | 49.4時間 |
外科 | 1,374万円 | 52.5時間 |
麻酔科 | 1,335万円 | 45.8時間 |
整形外科 | 1,289万円 | 46.8時間 |
呼吸器科 | 1,267万円 | 49.4時間 |
消化器科 | 1,267万円 | 49.4時間 |
循環器科 | 1,267万円 | 49.4時間 |
内科 | 1,247万円 | 43.4時間 |
精神科 | 1,230万円 | 38.4時間 |
小児科 | 1,220万円 | 52.0時間 |
救急科 | 1,215万円 | 54.0時間 |
その他 | 1,171万円 | 46.0時間 |
放射線科 | 1,103万円 | 46.1時間 |
眼科 |
1,078万円 | 44.3時間 |
耳鼻咽喉科 | 1,078万円 | 44.3時間 |
泌尿器科 | 1,078万円 | 44.3時間 |
皮膚科 | 1,078万円 | 44.3時間 |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
上記の表からわかるように、労働時間が長いからといって、必ずしも年収が高いとはいえません。たとえば、救急科や小児科は、1週間あたりの労働時間が50時間を超えており、比較的忙しい科とされています。しかし、年収でみると、比較的低い位置にあります。このことから、忙しさと年収は、相関関係ではないということがわかるでしょう。
また、忙しいにもかかわらず年収が低いのは、診療科に在籍する医師の年齢が比較的低いのも理由のひとつです。2020年に厚生労働省が発表した「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、救急医の平均年齢は41.8歳でした。すべての診療科の平均年齢は50.1歳であることから、比較的若い医師が活躍していることがわかります。その結果、平均年収が下がってしまっているのかもしれません。
参考 :厚生労働省|「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計」
医師がワークライフバランスを確保するには
医師がワークライフバランスを確保するには、業務内容や労働時間を自分の合ったものに整える必要があります。具体的な方法は、以下の通りです。
- 転職をする
- 働き方を変える
- 転科する
病院形態や勤務地域、雇用形態や診療科などを変えることで、ワークライフバランスが確保しやすくなることもあります。以降でそれぞれ詳しく解説します。
転職をする
勤務する病院の形態や経営状況、勤務地域によって、医師の労働環境は大きく変化します。たとえば、人手不足になっている病院では、労働時間が長くなる傾向になるため、ワークライフバランスが取りにくいです。
一方で、医師のタスクシェアやタスクシフトなどが徹底され、医師の負担を減らす仕組みが整っている病院では、労働時間が短くなる可能性があります。そのため、比較的ワークライフバランスが取りやすいといえるでしょう。
働き方を変える
ワークライフバランスを確保するために、働き方を変えることは有効です。医師には、常勤勤務のほか、スポットアルバイトや非常勤、フリーランスなどの働き方があります。
たとえばスポットアルバイトの場合は、1日単位もしくは数時間単位で仕事ができるため、プライベート時間の調整がしやすくなります。アルバイトの場合は単発契約のため、他の仕事や家庭とのバランスを取りやすくなるのもメリットです。また、常勤医師の代わりができる即戦力が求められるため、時給は高めに設定されています。夏季休暇や年末年始などは需要が高いため、繁忙期に集中して仕事をすることも可能です。一方で、それ以外の時期では希望する日程で仕事に入れないことがあるため、収入が安定しない可能性があります。
非常勤での働き方は、勤務日数が週1~2日や午前・午後だけなど条件を決め、定期的に勤務できます。常勤より労働時間が短く、時間外労働やオンコールなども少ないため、ワークライフバランスが取りやすいといえるでしょう。また、複数の医療機関を掛け持ちすることもできるのがメリットです。
一方で、契約期間が半年〜年単位であり、常勤より収入が少なくなる場合があります。一定の収入を得るためには、複数の医療機関で掛け持ちしたり、アルバイトとしてスポットで働いたりする必要があるでしょう。
アルバイトや非常勤を掛け持ちしてフリーランス医師として活躍することも、ワークライフバランスを確保するにはおすすめの働き方です。
転科する
現在の診療科とは異なる診療科に転科することで、ワークライフバランスが取りやすくなる場合があります。平均労働時間や平均年次有給休暇取得日数などを踏まえ、自分に合った診療科への転科を検討するとよいでしょう。
ただし、転科をする場合、実績や専門知識などが必要なケースがあります。そのため、転職先の病院で研修や専門資格の獲得までを補助してくれるかをよく確認して、転科することが望ましいでしょう。また、条件によっては、転科することで年収が下がる場合もあるため、条件面などを確認の上、よく検討してから転科しましょう。
まとめ
診療科によって、医師の業務が比較的忙しくないとされている診療科はあります。
それぞれの診療科によって、勤務時間や年次有給休暇、当直日数やオンコール回数は異なるため、これらを確認して忙しくない科を選ぶことで、自分らしい働き方を選択できるでしょう。
また、ワークライフバランスを確保するために勤務地を変えたり、雇用形態を変えたりすることで、労働環境が大きく変わる可能性があります。しかし、現状の環境を変えたいと考えつつも、転職方法がわからないと悩んでいる医師もいるのはないでしょうか。そんな医師の皆さんにおすすめなのが、メディカルジョブです。
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