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勤務医の平均年収は?年齢や診療科、勤務先の規模による年収の違いも解説

医師の仕事は報酬が高いと思われがちですが、実際、全国の勤務医たちの平均年収は、年齢や診療科、勤務先、役職など、条件によって異なるのが現状です。

ハードワークの対価としては、報酬に納得がいかない勤務医の方もいるでしょう。ここでは、さまざまな条件別の平均年収や収入をアップする方法などをご紹介します。

勤務医の平均年収

多くの責任を背負い、ハードな仕事をこなす医師にとって、満足な報酬を得られるかどうかは、仕事の満足度を図るための重要なポイントとなるでしょう。

ちなみに、勤務医の平均年収は、年齢、診療科、勤務地、経営母体などの条件によって大きな差がありますが、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は1,428万円となっています。

一見すると高額ですが、勤務医の場合、一般的なサラリーマンと同様、給与からさまざまな費用が引かれます。具体的には、所得税、住民税、健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険が天引きされるほか、勤め先によっては、生命保険や財形貯蓄などが引かれることもあります。その結果、勤務医の手取り額は、収入の約60〜70%ほどになると考えられます

【年齢別】勤務医の平均年収

まずは、年齢別に勤務医の平均年収を見てきましょう。

 

年齢 年収(男性)(万円) 年収(女性)(万円)
20~24歳 474.5 435.8
25~29歳 751.7 639
30~34歳 952.3 1008.4
35~39歳 1197.3 1011.2
40~44歳 1340.4 1184.8
45~49歳 1572.1 1309.6
50~54歳 1704.3 1640.6
55~59歳 1744.7 1463.9
60~64歳 1826.3 1205.1
65~69歳 1609.4 1399.9
70歳〜 1506.8 990.3

出典: e-stat「政府統計2019年賃金構造基本統計調査 第2表」

男女別に平均年収を見てみると、女性の医師の平均年収は、男性より低い結果となっています。その理由としては、女性の場合、出産や育児などによって勤務時間・日数を減らさざるをえない時期があることが考えられます。

また、年代別に見てみると、年齢に伴って平均年収も上がり、30代後半になると、1,000万円を超えるケースも見られます。また、60代後半を境に下がってくる傾向にあります。

【診療科別】勤務医の平均年収

では、診療科ごとの平均年収はどうでしょうか。2011年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「勤務医の就労事態と意識に関する調査」によると、診療科ごとの平均年収は、上から順に以下のようにランキングされています。

診療科 平均年収(万円)
脳神経外科 1480.3
産科・婦人科 1466.3
外科 1374.2
麻酔科 1335.2
整形外科 1289.9
呼吸器科・消化器科・循環器科 1267.2
内科 1247.4
精神科 1230.2
小児科 1220.5
救急科 1215.3
その他 1171.5
放射線科 1103.3
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科皮膚科 1078.7

出典:勤務医の就労事態と意識に関する調査

調査結果から、外科系の診療科目が上位を占めていることが分かります。その理由の一つとして、労働時間が長いことが考えられます。外科系の医師は通常の診療に加え、緊急手術が必要になったり、術後に容態が急変したときに、労働時間外でも対応しなければならないからです。また、より専門的な知識や技術、臨床経験なども不可欠であるため、対価も高くなるのでしょう。

【勤務地別】勤務医の平均年収

次に、勤務地別に勤務医の平均年収を見て見ましょう。

万円
東京都 1,040
大阪府 1,315
山口県 1,642
北海道 1,103
高知県 1,252

必ずしも都心の方が地方都市より平均年収が高いわけではないことが分かります。その理由としては、医師不足など地域の医療事情が影響していることが考えられます。その理由としては、医師不足など地域の医療事情が影響していることが考えられます。こうした事情を考えると、地方の医療機関に勤めれば、若い医師でも高い収入を得るチャンスが期待できそうです。

【経営母体別】勤務医の平均年収

勤務医の平均年収は、勤務先の病院がどのような経営母体かによって、大きく変わってきます。経営母体には、次のようなものがあります。

  • 国立病院
  • 公立病院
  • 公的病院
  • 医療法人立病院
  • 個人病院

これらの経営母体別の平均年収は以下の通りです。

経営母体 平均年収(万円)
国立病院 882.4
公立病院 1347.1
公的病院 1353.4
医療法人立病院 1443.8
個人病院 141.0

この調査結果によると、医療法人に勤務する医師の平均年収が高めであることが分かります。経営母体によって平均年収に差が出てくる理由としては、社会的な立ち位置も影響しています。

例えば、平均収入が低い国立や公的病院などは、経営に際して国や地方自治体などの財政状況と切り離せないこともあり、人件費を抑えざるを得ないといった事情があることが考えられます。

国立病院

国立病院とは、全国に140の病院を運営する独立行政法人が運営する病院のことです。具体例を挙げると、独立行政法人病院機構、国立大学法人、国立高度専門医療研究センターなどがあります。

医師の給料は独自の給与規定に基づいて支給され、医長以上は年俸制が採用されています。また、国立病院の勤務医には、規定の給与に加え、業績手当、宿日直手当、特殊業務手当のほか、業務以外の手当、例えば扶養・住居など、生活にかかわる各種手当が厚いのも特徴です。

公立病院

公立病院とは、都道府県や市町村が運営する病院のことです。一般診療のほかに、へき地や離島などでの診療、救急災害医療、高度・先進医療など、民間の医療機関では対応しきれない医療に携わっています。

年収は、医療法人立病院などの民間病院よりは低めの傾向があります。その背景には、地域医療を担う公立病院には、利益率にとらわれない、非採算領域での医療を行う任務があることが考えられます。

公的病院

公的病院とは、厚生労働省が定めた運営団体を母体とする病院のことです。例えば、都道府県・市町村・地方公共団体の組合、国民健康保険団体連合会及び国民健康保険組合、日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、厚生農業協同組合連合会、社会福祉法人北海道社会事業協会などが母体となっています。

公的病院は「医療のみならず保健、予防、医療関係者の養成、へき地における医療等一般の医療機関に常に期待することのできない業務を積極的に行い、これらを一体的に運営する」ことが役割とされています。

その点では、公立病院と経営母体は異なるものの、任務としては似ているといえます。そのため、収入についても、医療法人立病院よりは低めの傾向があります。

医療法人立病院

医療法人とは、厚生労働省によると、「病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人」(引用:厚生労働省|医療法人の基礎知識)と定義されています。大きく分けると、病院や診療所などの開設を目的とした社団医療法人と、寄附や財産などに基づいて設立される財団医療法人の2種類があります。

医療法人立病院は国公立や公的病院と比べて、医師やスタッフの数が少ないため、医師ひとりに対する患者数が多くなります。また、より利益を追求する側面もあります。こうしたことから、勤務医の年収も高めの傾向にあるのでしょう。

個人病院

個人病院とは、法人化せず、個人によって経営されている病院のことです。そのため、財産や収入は経営者に帰属し、営利目的の活動も自由にできます。また、院長の専門分野を主に診る専門病院とし、20床以上の病床が設置されているケースが多いのも特徴です。

個人病院の勤務医の年収は経営者の運営の仕方によって変動することが考えられますが、医療法人や国公立・公的病院の勤務医と比べると、やや低めの傾向にあります。

【勤務先の規模別】勤務医の平均年収

次に、勤務先の規模別に平均年収を見てみましょう。

勤務先の規模 年収(万円)
10~99人 1748.1
100~999人 1462.6
1,000人以上 968.9

出典:e-stat「政府統計2019年賃金構造基本統計調査 第2表」

勤務する人数から経営母体を想定すると1,000人以上は大学病院や地域の機関病院といった大規模な病院、100人〜999人は民間の中小規模病院となります。統計結果から、大規模な病院になるほど平均年収は下がるようです。

勤務医が年収を上げるには

ここまでは、勤務医の平均年収について、さまざまな条件ごとに見てきました。ここからは、年収アップを目指すための方法について紹介します。

勤務医が年収を上げるためには、以下のような方法が考えられます。

  • 勤務時間を増やす
  • 役職に就くことを目指す
  • 非常勤医師としてアルバイトをする
  • 転職をする

以下で詳しく見てみましょう。

勤務時間を増やす

勤務医の給与体制は、年俸制がとられていることが多く、同じ病院での勤務時間を増やすことで、収入アップを目指せます。例えば、非常勤ではなく常勤の勤務形態を選んだり、通常業務だけでなく当直やオンコールも担当したりすることで、収入アップが期待できます。ただ、常勤医師として採用してもらえるかは医師としての経験値が求められますし、勤務時間が増えれば、その分ハードワークにもなります。そのため、年齢や体力・気力を踏まえて、検討しましょう。

役職に就くことを目指す

役職に就くことでも収入アップは期待できます。例えば、科長や部長、病院長といった役職につくと、通常の給与に役職手当が加算されます。ただし、勤務先の経営母体にもよるので、条件などを確認しておきましょう。

役職に就くことを目指すためには、臨床や研究などの実績を上げることはもちろん、組織内でのコミュニケーション力も重要です。そのため、日頃からチーム医療を意識し、その中で決断力を身につけることで、周囲からの信頼を得られるよう心がけましょう。

アルバイトをする

勤務先の業務時間以外の時間を活用して、非常勤の医師として他の病院で働くなど、スポット(単発)のアルバイトをすることも年収アップにつながります。体力のある若手の医師の場合、当直やオンコールなどのアルバイトは日給が高いのでおすすめです。

また、臨床経験を積めるというメリットもあります。やや古いデータではありますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2011年に行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査 」 によると、メインの勤務先のほかに1ヶ所アルバイト先がある医師の平均月収は22.4万、年収では268.8万円アップすることが期待できることになります。

ただし、こうした単発のアルバイト先に採用してもらうためには、即戦力を見込んでもらえる情報が必要です。そのために、専門医の資格など、目に見える形でアピールできるものを持っておくと有利でしょう。

転職をする

勤務先の病院や業務形態などによっては、アルバイトを掛け持ちできないこともあるでしょう。そうした場合には、思い切って転職を検討することも一つの方法です。どのくらい年収をアップしたいのか、またそのためにかけられる体力・気力などに合わせて、より条件のよい勤務先を選びましょう。とはいえ、メインの収入源だった病院を辞めるのは、覚悟と勇気がいるもの。その際に便利なのが、転職エージェントです。

転職エージェントは、医師の公募情報のほか、経営母体や役職など、条件ごとの事情なども含め、医師の転職事情に関する豊富なデータがそろっています。まずは登録して、満足できる転職先につけるよう準備しましょう。

まとめ

勤務医の平均年収は、経営母体や年齢、診療科、勤務形態や勤務時間といった条件によってかなり差が出ることが分かりました。現状に満足がいかず、年収アップを目指すなら、非常勤医師としてアルバイトをしたり、転職を検討したりするなど、さまざまな方法があります。明るい未来を見据え、ワークライフバランスなども加味しながら、効率よく収入アップできるよう準備しましょう。そのために、医師専門の転職エージェントを活用するのも一つの手です。

【医師向け】退職届の書き方とマナー、病院退職後の医師のキャリアについて解説

人間関係や激務などで勤め先の病院を退職しても、学会や地域の医療連携などで付き合いは継続せざるを得ないのが医師業界。どんな理由であれ、病院を辞める際は、円満に退職することが大切です。

ここでは、退職の申し出から退職届の書き方、提出の仕方まで、マナーについて詳しく解説します。また、退職後のキャリアの選択肢についてもいくつかご紹介します。

退職届とは

退職届とは、退職することが確定したあとに、労働契約の解除を会社に対して届け出るための書類のことです。

病院に限らず、どんな勤務先でも退職を希望する場合には、雇用契約を解消するための正式な意思表示が必要です。その際、「退職願」「退職届」「辞表」のどれを提出すべきか迷う方もいるのではないでしょうか。これらは、用途や役割が少しずつ異なります。まずはその違いを確認しましょう。

退職届と退職願、辞表の違い

「退職願」「退職届」「辞表」は、それぞれ提出するシーンが違います。それぞれの違いについて、次の表で確認しましょう。

 

役割

退職願

退職したい旨を伝えるための申し出です。ただし、必ずしも書面で提出する必要はなく、「退職をしてもよいでしょうか」と口頭で相談しても構いません。

退職届

勤務先と相談のうえ、退職することが決まったあとに、退職日を書面に記して提出するものです。勤務先によっては規定のフォーマットがあるので、事前に確認しておきましょう。

辞表

病院の場合、理事長や部長、科長などの役職者が任務を辞するときに提出するものです。

ちなみに、辞表を出しても役職を降りただけで、勤務先の病院には継続して勤務しているケースもあります。

退職の意思が固まったら、早めに退職願の準備をし、上司に相談することも大切です。考え直すよう促されて、交渉に時間がかかる場合があることも想定しておきましょう。

勤務先に相談している段階では退職の意思を撤回できますが、よほどの理由がない限り、おすすめできません。退職するということは、場合によっては病院に対して何らかの不満を伝えることにもなるので、撤回した後も以前と同じように人付き合いできるとは限らないからです。お互いに円満な人間関係を継続していくためにも、「退職願」を提出するまでの間に、意思をしっかりと固めておきましょう。

なお、自己都合ではなく、勤務先の都合で退職する場合は、届出る必要はありません。それどころか、退職届を提出してしまうと、失業保険の給付を受ける際に不利な条件になることもあるので気をつけましょう。

退職届の書き方とテンプレート

病院によっては、退職届のフォーマットが決まっているところもありますが、文面としては、退職の意思・理由・退職日を伝える以外の情報は入れない、シンプルなものが一般的です。以下に文例とポイントをまとめたので参考にしてください。

 

ポイント

タイトル

「退職願」「退職届」は、便せんの中央よりやや上(横書きの場合は中央)に書く。

退職理由

どのような場合でも「一身上の都合により」とするのが一般的。退職理由を具体的に書く必要はない。

退職日

年月日は和暦・西暦どちらでもOK。ただし、縦書きの場合は漢数字(一、二、三)を使うのが一般的。

文末

「退職届」の場合には、「退職いたします」で締める。

届出年月日

退職日と同様、和暦・西暦どちらでもOK。縦書きの場合は、漢数字を使用する。

所属部署・氏名

役職名を記載する必要はない。氏名は、所属部署名の次の行の下(横書きの場合は右)に書く。また、捺印のスペースを空ける。

宛名

文末に病院の代表者の役職と氏名を書く。敬称は、「様」あるいは「殿」が一般的。

退職願・退職届の目的は、あくまで、「病院の都合ではなく、本人の希望による退職である旨」を伝えることです。その点が明確になっていればよいので、必要な情報だけをシンプルに記しましょう。

退職届を入れる封筒の書き方とマナー

退職願や退職届を提出する際には、白色・無地の封筒を選びましょう。特に、二重封筒といって、中身が透けないよう、紫色の紙で二重にしてあるものが、ふさわしいといわれています。封筒の書き方やマナーについては以下にまとめたので確認してみましょう。

封筒の書き方

まず、黒インクの油性ボールペンで表面に「退職願」または「退職届」とだけ書きます。次に、裏面の左下に、所属の診療科と氏名を書きましょう。最後に、作成した退職願・退職届を三つ折りにして封入して封を閉じ、「〆」マークを書いたら完成です。

なお、提出する際には、特別な理由がない限り、手渡しすることをおすすめします。その場合は封筒を閉じなくてもOKです。

封筒の入れ方

封筒に手紙を入れる際には、文面を内側にして三つ折りするのが一般的です。手順は、以下の通りです。

まず、文面が正面にくるように置き、縦に三等分するように、用紙の下1/3を上に向かって折ります。次に上1/3を下に向かって折ります。折り目を平行にし、左右の端が重なるように折りましょう。まっすぐ折れる自信がない場合は、定規を使うことをおすすめします。

退職届の提出先

退職届を書く際の宛先は医療機関の代表者となっていますが、実際には直属の上司や人事部に手渡しするのが一般的です。ただし、小さな医療機関の場合は直接代表に渡すのが恒例というケースもあるので、事前に確認しておきましょう。

なお、どうしても手渡しが難しい場合は、郵送でも問題ありません。その場合には、添え状に手渡しできない理由と謝罪の言葉を入れておくことをおすすめします。

退職届を出すまでの流れ

退職を決めてから、届出をするまでの流れは次の通りです。

退職の意思が固まったからといって、いきなり退職届を提出するのは控えましょう。まずは、直属の上司に退職の意思を伝え、了承を得ることが大切です。医師の場合は、医局人事でローテーションが組まれていたり、患者さんのカルテの引き継ぎがあったりすることもあり、半年前くらいから相談することが望ましいとされています。早いケースでは1年前から伝える医師もいるようです。

退職届を出すタイミングは、病院で定められている就業規則によって異なります。民法第627条第1項では2週間前までに提出すればよいと定められていますが、民法は任意規定と解されるため、労働規約や就業規則に決まりがあるならそれらの規則を優先させることが一般的です。

そのため、事前に勤め先の就業規則を確認しておきましょう。規則の内容が分かりにくい場合は、上長に相談し、明確に把握しておくことをおすすめします。

参照:日本労働組合総連合会

病院退職後の医師のキャリア選択肢

病院を退職したあとの医師のキャリアには、どのような選択肢があるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。例えば、同業種で別の病院へ転職したり、独立・開業したりするほか、まったく別の異業種への転職を検討するのもよいでしょう。

ここからは、医師のさまざまな転職案について、詳しくご紹介していきます。

同業種への転職

まずは、医師免許を有効に活用できる職場への転職です。同業種への転職としては、例えば、研究医、産業医、学校医、健康スポーツ医として働く方法があります。

いずれも、これまでの臨床経験を生かせるので、転職するにあたり、特に準備は必要ありません。また、病院勤務のときと比べると拘束時間が比較的少ないので、激務からも解放されるでしょう。

独立・開業

勤務医を退職し、開業医となる選択肢もあります。病院組織の考え方に捉われず、これまで積み重ねてきた診療経験や知識に基づいて自分の方針で医療を実現していける点で、やりがいを感じられるでしょう。

ただし、開業医は医師であると同時に経営者でもあるため、診療だけでなく、経理や人事、行政手続きまで、すべての業務を担わなければなりません。こうしたメリット・デメリットを視野に入れたうえで、開業すべきかを検討しましょう。

異業種への転職

「医師の仕事に疲れた」あるいは「医師の資格にこだわらず、幅広い業種への転職を検討したい」という方もいることでしょう。そういう人のなかには、医療コンサルタントや弁護士、ベンチャー系企業へと転職した例も見られます。

例えば、医療分野や製薬分野にかかわる医療コンサルタントは、臨床医療の第一線として現場で働いてきた経験を大いに生かせるでしょう。また、医師は最新の医療知識を常にアップデートする習慣が身についているので、弁護士をはじめとした新たな資格にもチャレンジしやすいです。

近年、ヘルスケア分野はベンチャー系企業などによる事業開拓が盛んな分野のため、ベンチャー系への転職もおすすめです。ヘルスケア分野には、医療提供サービス、医療機器の開発、健康管理アプリなどが含まれるので、医師の経験やスキルを大いに生かせます。

一方で、年収ダウンやキャリアダウンは覚悟する必要があります。異業種に転職するということは、一からキャリアを積み直すことでもあるので、転職願望がある場合には、できるだけ若いうちに決断するのがおすすめです。なお、今までのキャリアを維持し、より好条件で転職するためには、医師専門の転職エージェントを頼るのがよいでしょう。

病院を辞める際の退職届に関するよくある質問

ここでは、退職届けの作成や病院を退職する際に出てくる疑問に、まとめてお答えします。

Q.退職届は手書きとパソコンどちらがいい?

A.退職届は、手書きでもパソコンでもOKです。「手書きの方が、気持ちがこもっていてよい」という考え方も、確かに根強く残っていますが、手書きで誤字脱字が目立つのも考えものです。勤め先の病院の規定がなければ、手書きでもパソコンでも、好きな方で作成しましょう。

なお、パソコンで作成した場合は、本人が書いたことを証明するために、捺印や自筆の署名が求められるケースもあります。あらかじめ捺印するか、手書きで署名しておくとスムーズです。

Q.退職届は縦書きと横書きどちらがいい?

A. 縦書きが一般的です。ただ、病院名にアルファベットが入っている場合などには、横書きを指定されるケースもあるようです。なお、横書きの場合は、縦書きとルールが異なるので、事前に確認しておきましょう。

Q.退職届は郵送できる?

A. 退職届は、直属の上司や人事、病院の代表者に直接手渡しするのが基本です。ただ、病気などやむを得ない事情がある場合には、郵送することも可能です。その際には、添え状に手渡しできない理由と謝罪の言葉を入れるのが社会人としてのマナーです。

Q.病院を辞めるときは、いつ・誰に言う?

A. 患者さんのカルテの引継ぎなどもあるため、半年ほど前から勤務先に相談するのが望ましいです。まずは、直属の上司に退職したい旨を伝え、退職日が決まったら、同僚やスタッフにも挨拶しておくことをおすすめします。

ただし、退職したい場合は、申し伝えるタイミングや退職の流れを就業規則で確認し、その規則に従って退職手続きを行うのが基本的な流れなので、そちらもよく確認しておきましょう。

まとめ

医師業界は、勤務先の病院を退職した後も付き合いが継続するものです。円満に退職し、その後のキャリアにつなげることが大切です。ここでは、退職願・退職届の書き方、誰に・どのタイミングで提出するのかなど、退職時のマナーについて徹底解説してきました。退職時の流れやマナーを知っていれば、実際に病院を退職する際にもスムーズに動けます。

また、退職後、新たなキャリアを築くための選択肢についても、いくつか具体例を参考として新しいキャリアを築くきっかけにしましょう。

医師は副業できる?おすすめの副業や注意点を徹底解説

医師の仕事は収入が多いと思われがちですが、人の命にかかわる分、責任も重く、ハードワークはつきものです。その対価としての報酬に満足できず、副業を考えている医師もいると思います。

ここでは、医師の副業にはどのようなものがあるのか、どのくらい年収アップを期待できるのかなど、副業を始める前に知っておきたい情報についてまとめました。

医師は副業できる?

近年、働き方改革が進み、多くの企業で副業を許可しています。医療業界でも副業を解禁するところが増えつつありますが、公的な病院などで働いている場合、副業がNGとされるケースもあります。そのため、副業を始める際には、就業規程を確認しておくことが大切です。

医師におすすめの副業

ここからは、医師におすすめの副業を紹介していきます。まず、副業の種類別に、リスク・利益性・難易度についてまとめてみました。

副業 リスク 収益性 難易度
定期非常勤 比較的低い 比較的高い 比較的低い
スポットアルバイト 比較的高い 高い 比較的低い
医療系セミナーの講師 比較的低い 比較的高い 比較的高い
オンライン健康診断 比較的低い 比較的低い 低い
医療系記事の執筆・監修 比較的低い 低い 低い
フリマアプリ 低い 低い 低い
不動産投資 比較的高い 比較的低い 比較的高い
FX 比較的高い 比較的低い 比較的高い
株式投資 比較的高い 比較的低い 比較的高い

医師におすすめの副業は、大きく分けると、医師の資格や経験を生かせる仕事と、そのほかの職種に分けられます。資格を生かし、収入アップとキャリアアップを同時に図りたい場合、定期非常勤、当直などのスポットアルバイト、オンライン健康診断、医療系記事の執筆・監修などがおすすめです。少ない時間を有効活用して収入アップを図りたい場合は、フリマアプリや不動産投資、FX、株式投資などがおすすめです。

定期非常勤

定期非常勤とは、常勤先と別の医療機関で定期的に勤務する働き方です。業務内容は勤務先によって異なりますが、一般的には、通常の診察業務を担うことになります。また、安定した副業収入(相場は時給1万円〜)が得られる点もメリットです。さらに、さまざまな症例を診る機会にもなるので、医師としてのスキルアップと収入アップとの両方が期待できます。

しかし、同一施設で1週間32時間以上勤務すると常勤扱いになるため、勤務時間には注意しなければなりません。

スポットアルバイト

スポットアルバイトとは、一日あるいは一定の時間だけ、単発で医師として勤務することです。時給や日給が高めで、空いた時間を有効活用して収入を得ることができます。

仕事内容としては、例えば、健康診断、長期休暇をとっている医師の代診、ワクチン接種、当直などが挙げられます。ちなみにスポットでの当直アルバイトの報酬は、常勤先で当直を行う場合と比べて、相場が2~5倍の報酬になる(3万~10万円程度)ともいわれています。常勤先と別の環境でさまざまな医療現場を体験する機会にもなるので、キャリアアップにもつながります。

ただし、勤務先がいつも異なる施設になるため、行く先々で臨機応変に対応できるコミュニケーション力・判断力が必要となります。また、スポットアルバイトはお盆休みや年末年始などの人手不足を解消する目的で募集されることが多いため、副業したい時期に募集がないこともあります。そのため、スポットアルバイトを希望の場合、求人情報サイトなどで募集情報をこまめにチェックしましょう。

医療系セミナーの講師

専門分野の知識や臨床経験での実績がある医師は、副業として医療系セミナーの講師をする方法もあります。一般企業や製薬会社をターゲットにした仕事なので、業績をアピールする機会としてもおすすめです。知名度が上がり、書籍の出版依頼などにつながれば、多額の収入を得ることも期待できます。

リスクとしては、レクチャーするための資料作成に時間と労力がかかることや、プレゼンテーション能力、コミュニケーションスキルなどが求められることが挙げられます。また、企業や製薬会社に注目してもらうため、自身でセミナーを企画するなどして積極的に営業活動することも大切です。

オンライン健康相談

Zoomなどのオンライン会議システムを利用した診療や健康相談を副業とする方法もあります。近年では、プライバシー保護などの観点から、AGAや美容に関するお悩み、睡眠障害、禁煙などのオンライン診療が導入されています。また、オンライン診療・健康相談は全国各地から受診でき、かつ医師も在宅ワークとして常勤の勤務時間外に行えるため、患者さんからも医師からも注目が高まっています。

ただし、こうした副業を行うためには、インターネット環境が整っている必要があります。また、競争率が高ため、安定した副業収入を得ることが難しいかもしれません。オンライン健康相談を副業にしたい場合は、まず、医師専門の求人サイトに登録し、こまめに情報を収集して機会を狙いましょう。

医療系記事の執筆・監修

近年、インターネット上では、医療や健康に関するさまざまな情報が公開されていますが、なかには、医学的に誤った情報が含まれていることも少なくありません。そのため、医師が執筆・監修した、信頼度の高い医療・健康関連の記事のニーズが高まっています。

単価は1文字3~10円程度、1記事5,000~5万円程度が相場で、そう高くはありませんが、執筆者として氏名や経歴などを掲載できるので、知名度を上げるにはよい機会となります。また、医師が自ら執筆する時間をとれない場合、監修者として記事をチェックするだけでも副業収入を得られます。

ただ、依頼案件を探すのが難しい点がデメリットです。そのため、普段から製薬会社をはじめ、インターネットメディアとのつながりをつくっておいたり、医師キャスティングサービスやクラウドソーシングなどに登録したりして、機会を狙いましょう。

フリマアプリ

医師の資格にこだわらずに副業をしたい場合、フリマアプリを活用する方法があります。勤務先が公的な病院の場合でも、営利目的でない活動であれば、副業収入を得ることは可能です。特にスキルも必要ないので気軽に始めやすく、空いた時間に収入を得られる点はメリットです。

ただし、副業としフリマアプリを利用する場合は、不用品を売る目的でのみ使用することが条件です。そのため、安定した収入を継続して得ることは難しいでしょう。

不動産投資

医師の副業として、資産運用をするのも一つの手です。勤務先が副業を解禁していなくても、資産運用は副業とみなさないとするケースがあるからです。

資産運用の代表例としては、不動産投資があります。不動産投資とは、マンションや一軒家などの不動産物件を購入し、家賃で収入を得ることです。不動産投資ローンには審査がありますが、医師は平均収入が高く、社会的地位も認められているため、通りやすい傾向にあります。また、不動産投資は、働かずして毎月安定した家賃収入が入ってくる点がメリットといえます。

デメリットとしては、投資に関する知識がある程度ないと、好条件の物件を見極めるのが難しく、場合によっては多額の負債を抱えてしまうことです。

FX

多忙な毎日を送る医師にとって、FXで副収入を得るのも一つの手段です。

FXとは、例えば、日本円で外貨を買ったり売ったりしたときに生じる差額を利益とする取引のことです。システムトレードや自動売買ツールを利用すれば、チャートを自分で確認しなくても取引できるので、すき間時間を使って副収入を得られる可能性があります。

ただし、FXは値動きが激しく、自身でこまめに値動きをチェックしなければ、好条件での取引は狙えない点や、運用リスクも高い点から、多忙な医師には難しいかもしれません。

株式投資

医師の副業として、より始めやすいのは株式投資です。最近では、NISAをはじめ、非課税で始められる投資制度もあります。また、企業の個別銘柄に投資する場合は、配当金などの収入を得ることも可能です。売却時の価格が購入時よりも高くなるタイミングを狙えば、その差額で高利益を得ることができます。

デメリットとしては、初期費用がかかることや、元本を失う危険がある点が挙げられます。また、iDeCoなどの投資制度の場合は、所定の年数が経過するまで投資した資金を引き出せません。そのため、株式投資を副業とする場合には、事前に上手に運用するための知識を得ることが不可欠です。

医師が副業する際の注意点

医師が副業をする場合は、次のことに注意しなければなりません。

  • 就業規則を確認する
  • 副業で年間20万円以上収入がある場合、確定申告を行う
  • 副業のリスクについても十分に理解しておく

以下で詳しく説明していきますので、リスクをしっかりと理解したうえで副業を始めましょう。

副業を始める前に就業規則を確認すること

まず、副業を始める際は、勤務先の就業規則をしっかりと確認しましょう。なお、勤務先にかかわらず、初期研修医(2年間の臨床研修期間)は医師法によりアルバイトや副業が禁止されています。その他、公立病院の勤務医は公務員にあたるため、初期研修医でなくても副業は原則禁止です。違反すると懲戒処分を受けるので注意しましょう。

また、就業規則で副業自体が禁止されていない場合でも、副業する際に、書類などの届出を求められるケースがあります。事前に勤務先に相談しておきましょう。

参照:医師法第16条の2

副業で年間20万円以上収入がある場合、確定申告が必要

副業による収入が年間20万円以上になる場合は、確定申告が必要です。勤務先が複数ある場合は、特に注意しましょう。例えば、年末調整されない金額と、その他の収入額の合計が年間20万円を超える場合も申告が必要です。その他、常勤先の収入が2,000万円を超える場合も確定申告をしなければなりません。申告を怠ると、ペナルティを課せられる可能性があるので、十分に注意しましょう。

なお、副業による収入が多い場合は、節税対策のため、個人事業主として青色申告することをおすすめします。ただ、青色申告を行う場合、複式簿記での記帳や帳簿の保管が必須となります。手続きに自信がない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

副業を行うリスクについても理解しておくこと

医師の仕事は、ちょっとした判断ミスでも人の命に関わるため、責任は重大です。副業をする際には、本業に支障をきたさないよう注意しなければなりません。仕事内容としては難しくない副業でも、移動に時間がかかったり、睡眠時間を削ったりする業務は、予想以上に体力や気力を奪われます。疲れた状態で本業での信頼を損なうことがないよう、バランスをうまく取りながら収入アップを目指しましょう。

まとめ

医師が副業で効率よく収入を増やすために、医師の資格を生かしたアルバイトをしたり、医療系の記事の執筆や監修などで収入を得たりする方法を紹介しました。また、医師の資格にこだわらず、各種投資で利益を上げる方法についても解説しています。これらのことを参考にしつつ、ワークライフバランスをうまく取りながら収入アップを目指しましょう。