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医師向け|履歴書の書き方の基本とマナーを解説

転職活動において欠かせない履歴書作成。これは、医師が転職する場合も例外ではありません。

採用担当者は、履歴書に記載されたこれまでの経歴や、志望動機がどのくらい具体的に書かれているかなどを見て判断します。そのため、具体的にどのように履歴書を書くべきか、悩むことも多いでしょう。

今回は、医師向けの履歴書と封筒の書き方やマナーについて、具体的な例を含めて解説します。自信を持って履歴書を提出できるように、ぜひ参考にしてみてください。

医師の履歴書の書き方とテンプレート

医師の履歴書には、氏名や住所などの基本情報や経歴や資格などの仕事に関係する情報など、記入する必要事項がいくつかあります。

履歴書を記入する上で必要な項目について、書き方のポイントを以下の表にまとめました。

ポイント
日付 ●履歴書を記載した日ではなく、応募先に提出する日(持参の場合は面接日当日、郵送の場合は投函日、メールの場合は送信日)

●履歴書全体を西暦、和暦のどちらかで統一

氏名 ●戸籍登録の字体で正確に記載
生年月日・年齢・性別 ●生年月日はほかの記入欄とあわせて、西暦または和暦のどちらかで統一

●年齢は、履歴書を提出した時点での年齢

●性別は任意

住所・電話・メール ●住所は都道府県から省略せずに正式名称を書く

●電話番号は必ず連絡が取れるもの

●メールアドレスは、確実に受信できるものであればOK。ただし、現在の勤務先で使用するアドレスは避ける

証明写真 ●直近3ヶ月以内に撮影した写真を使用

●服装はフォーマルな装いで撮影

学歴 ●1行目の中央に「学歴」と記載

●正式名称で高等学校卒業から記載

職歴 ●1行目の中央に「職歴」と記載

●社名・病院名は正式名称で書く

●部署名・診療科目や雇用形態なども記入

●退職が決まっている場合は「退職予定」

●最後に右寄せで「以上」と記入

免許・資格 ●取得順に書く

●医師国家試験の合格は、「第何回」「医籍登録番号」も書く

●専門医や認定医、指導医などの資格も書く

志望動機・自己PR ●「なぜ、その病院・クリニックを選んだのか」簡潔にまとめる

●自分の経験を「希望する病院・クリニックで、どのように活かせるのか」を具体的に書く

その他本人希望欄) ●家庭の事情(育児、介護など)で勤務条件に希望がある場合は、具体的に書く

●特に希望がなければ、「貴院の規定に準じます」と記入

このように、正式名称や年号の統一などを意識し、応募先の病院で自分の強みをどのように活かせるかが伝わる履歴書を作成することが大切です。

ただし、実際とは異なる情報を記載した場合は経歴詐称となり、転職できない恐れがあるため、注意して書きましょう。

また、フォーマットの指定がない場合は自分で履歴書を作成できますが、必要事項の抜けや書き方の間違いがないようにテンプレートを活用することをおすすめします。

⇒厚生労働省の履歴書様式はこちら

履歴書を書く際のマナー

履歴書を書く際は、採用担当者が読みやすい書き方を意識することが大切です。具体的なマナーとしては、以下の5つがあります。

● 手書きの場合は黒のボールペンまたは万年筆で書くこと
● 「ですます調」「だ・である調」どちらかに統一した文章にすること
● 修正や訂正はNG
● 正式名称で書くこと
● 誤字脱字がないよう見直しをすること

では、詳しく見ていきましょう。

手書きの場合は黒のボールペンまたは万年筆で書くこと

手書きの場合は、採用担当者が読みやすく、文字が薄くなったり消えたりしないように書くことが大切です。

鉛筆や消せるペン、青や赤などのペンは読みにくいだけではなく、「適当さ」「いい加減」などマイナスな印象を与えてしまいかねません。

必ず黒のボールペンまたは万年筆で、丁寧に書くことを意識しましょう。

「ですます調」「だ・である調」どちらかに統一した文章にすること

全体の文体に統一感があると、採用担当者に読みやすいと感じてもらえて自分のアピールポイントが伝わる文章になります。

特に、志望動機や自己PRで「ですます調」と「だ・である調」が混ざっていると、「確認しない、いい加減な人」などネガティブな印象を与えるかもしれません。

必ずどちらかの書き方に統一し、読みやすい文章を書くことを意識しましょう。

修正や訂正はNG

手書きの場合、間違って書いてしまうことがあります。その際、修正液や修正テープの使用は避けましょう。また、二重線と訂正印で修正するのも避けたほうがよいです。

良いエピソードが書かれていても、修正や訂正があると悪い印象与えてしまいます。

履歴書を書く場合、1つでも間違ったところがあれば、最初から書き直すことが正しいマナーです。

正式名称で書くこと

学校名や資格などは、略して呼ばれる場合があります。しかし、履歴書を書く際は省略しないことがマナーです。

「高校」は「高等学校」、「〇〇大学病院」は「〇〇大学附属病院」など、正式名称で記載することを意識してください。

誤字脱字がないよう見直しをすること

手書きでもパソコンでも、誤字や脱字を見逃すこともあるでしょう。ただし、そのような履歴書を提出すると、「適当な人」「最終確認ができない人」といったマイナスの印象を与えてしまいます。

特に、忙しい中で作成した履歴書は、自分では完璧だと思っていても誤字脱字が残ってしまいやすいものです。

読みにくさや悪い印象を与えないためにも、何度か見直したうえで提出することを意識しましょう。

【医師向け】志望動機を書くときのポイント

医師の履歴書において、最も注目される項目は志望動機です。志望動機は、自分の強みやアピールポイントなどを伝える役割があります。

書く際は、以下の3つのポイントを意識するとよいでしょう。

● 応募先の魅力や特徴を調べる
● 自分の経歴と関係あることを書く
● 応募先での目標やキャリアパスを具体的に書く

それでは、詳しく見ていきます。

応募先の魅力や特徴を調べる

志望動機は、「その応募先をどうして選んだのか」が伝わるように書くのが大切です。より具体的に書くことで、志望度の高さをアピールすることができます。具体的に志望動機を書くためには、病院の公式ホームページなどで経営理念やその病院が力を入れている取り組みを調べましょう。

また、病院のホームページ以外にも、求人に記載されている仕事内容も必ずチェックしてください。求められている医師像が分かり、自分がどのようにアピールすればよいのか判断できるでしょう。

自分の経歴と関係あることを書く

採用したい人材と印象づけるために、応募先にとって「プラスになる人材」であることをアピールしましょう。そのために、自分の経歴に関係がある内容を書くことが大切です。

自分の経験や実績が応募先にどのような良い影響を与えられるのか、具体的にアピールしてください。

自分だけがプラスになるのではなく、応募先の利点を考えられる医師は採用したい人材といえます。

応募先での目標やキャリアパスを具体的に書く

採用担当者は履歴書から人物像や考え方、行動力などを見ています。また、応募先は、長期的に働いて貢献してくれる医師を求めているでしょう。

長期的な目標やキャリアパスが書かれていると、「この病院で長期間働く意思がある」と好印象を与えられます。

どのような目標やキャリアパスで応募したのか具体的に書き、説得力のある志望動機の作成が大切です。

履歴書の志望動機の書き方例

履歴書の志望動機の書き方を具体的にイメージできるよう、3つのケースについて例文を紹介します。

● キャリアアップを目指した転職
● ワークライフバランスを重視した転職
● 転科・未経験分野への転職

では、詳しく見ていきましょう。

キャリアアップを目指して転職する場合

キャリアアップを目指した転職の場合、自分の目標や入職後に貢献できることに着目して記載しましょう。

以下の例文を参考にしてみてください。

【例文】
私はこれまで消化器内科医として、さまざまな消化器系がんの早期発見のために内視鏡検査における研鑽を積んできました。
数ある病院の中でも貴院は、がんの早期発見と早期治療に注力し、地域住民の健康に貢献している病院といえます。
今後は、これまで培った内視鏡検査における実績と経験を活かし、より一層技術を深め、がんの早期発見などで貴院に貢献できる医師を目指したいと考えております。

ワークライフバランスを重視して転職する場合

ワークライフバランスを重視した転職では、家庭の事情から勤務について希望があっても直接的な記載は避けたほうが無難です。

主に、医師としての転職後の目標に着目した志望動機が良いでしょう。以下の例文を参考にしてみてください。

【例文】
私は出産を機に前職を退職し、1年間育児に専念してまいりました。子どもを預けられることになり、再び内科医としての復帰を決めました。
復帰後は、内視鏡検査の専門医や資格取得を目指し、消化器系がんの早期発見などに注力したいと考えております。
貴院では、資格取得のサポート体制が充実していることから、私自身の研鑽を積み、貴院の内科領域において貢献できるよう努めてまいります。

転科・未経験分野への転職の場合

転科・未経験の分野に転職する場合、その分野に関心を持ったきっかけに着目して熱意を伝えられると良いでしょう。

以下の例文を参考にしてみてください。

【例文】
私はこれまで約〇〇症例以上の内視鏡検査に携わり、数多くの消化器系がんを早期発見してまいりました。
検査を受けられた多くの患者様とお話をする中で、生活習慣病が大きく関係していることを実感し、がんを発症する前段階から患者様の健康をサポートしたいという思いが強くなり、予防医療の分野に着目するようになりました。
今後は最先端の予防医療を習得し、地域医療に貢献したいと考えております。

履歴書を入れる封筒の書き方とマナー

履歴書を入れる封筒には、基本的な書き方と送付時のマナーがあります。使用する封筒は、書類に折り目がつかない「角形A4号」「角形2号」などの定形外の白封筒が基本です。

ここでは、封筒の書き方や履歴書の入れ方、同封する書類について詳しく説明します。

封筒の書き方

封筒を書く際は、書類を手渡しするのか郵送するのかによって書き方に違いがあるため、注意が必要です。ここでは、それぞれの書き方を詳しく説明します。

【手渡しの場合】

手渡しの場合、表面に切手や宛名書きは不要です。赤色で「履歴書在中」または「応募書類在中」と記載し、四角で囲みます。

裏面には、真ん中から左上に提出日、左下に自分の住所を記載します。封をせずに、軽く折り曲げた状態で手渡しをしましょう。

【郵送する場合】


郵送の場合、表面に切手や宛名書きが必要です。部署宛は「御中」、担当者宛は「様」と書きます。手渡しと同様に、赤色で「履歴書在中」または「応募書類在中」と記載し、四角で囲みましょう。

裏面には、左下に自分の住所を記載します。封筒はのりでしっかり閉じ、封をしていることを示す「〆」を中央に書きましょう。

また、封筒を書く際は黒字のボールペンや万年筆を使い、文字が消えることがないように注意しましょう。誤字脱字がないか確認することも大切なマナーです。

封筒の入れ方

履歴書を封筒に入れる際は、封筒の表面側に履歴書の写真や氏名がくる向きで封入しましょう。採用担当者が封筒を開けてすぐに、氏名が確認できるように揃えて入れます。

また、書類は上から添え状(送付状)・履歴書・職務履歴書・その他の順番で並べると、採用担当者が確認しやすいでしょう。

封筒に入れる書類は、汚れや破れがないようにクリアファイルで挟むこともマナーのひとつです。

履歴書を入れて郵送する場合は送付状も添付すること

送付状とは、採用担当者への挨拶文や同封した書類の説明を書いたものです。郵送する場合では、書類の一番上に添えて同封します。

主に、履歴書を送る側が書類確認のために作成しますが、過不足ないか採用担当者が確認できる資料としても必要です。

送付状には、主に以下の内容を記載します。
● 送付年月日
● 宛名、担当者名
● 自分の氏名、連絡先
● 「応募書類一式送付の件」などの題名
● あいさつ文
● 応募の経緯や自己PRを簡潔にまとめた文章
● 締めのあいさつ文
● 同封書類の内容と枚数

送付状は相手がいない状況の中で書類確認に使う用紙のため、手渡しの場合は不要です。

医師が履歴書を書く際のよくある質問

医師の履歴書について、よくある質問をまとめました。

Q.履歴書は手書きとパソコンどちらがいい?

履歴書は、手書きとパソコンどちらで作成しても問題ありません。とはいえ、忙しい中での手書きは大変なうえに、パソコンのほうが誰にでも読みやすい文字になるという点はメリットといえるでしょう。

自分が書きやすい方を選ぶことをおすすめします。

Q.医師の資格は正式名称で書くべき?

医師の資格は、省略せずに正式名称で書きましょう。国家資格においては、「第何回の試験に合格したのか」「医師登録の番号はあるのか」を確認するために重要です。

履歴書には、間違いがないよう正確に記載しましょう。

Q.医師の転職でよく使われる履歴書のサイズは?

履歴書のサイズは、A4とB5の2つがあります。応募先から指定がない場合は、どちらを使用しても構いません。

希望動機や自己PRなどをたくさん記入したい場合はA4、履歴書に記載の内容をシンプルにまとめたいならB5を選ぶなど、状況に応じて選びましょう。

まとめ

医師の転職では、履歴書・封筒の書き方やマナーを意識することが大切です。履歴書の内容や封筒の状態によっては、採用の可否に大きく影響を与えるかもしれません。

転職を検討している医師で、履歴書の書き方に不安がある方は「メディカルジョブ」がおすすめです。

「メディカルジョブ」は医療従事者向けの求人サイトであり、応募書類の書き方から面接、入職まで医師の転職をサポートしています。

応募前に、履歴書の内容や書き方の添削を受けることで、時間や手間をかけずに読みやすく好印象を与えられる履歴書を完成させられるでしょう。まずは気軽に、「メディカルジョブ」にご相談ください。

新専門医制度とは?いつから始まった?既存制度との違いをわかりやすく解説

臨床研修医や若手医師のなかには、「新専門医制度ってどんな制度?」「以前と何が違うの?」など、疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。

新専門医制度は、2018年度からスタートした専門医の新しい認定制度で、専門医の質の統一や医療格差の解消が期待されています。ただし、研修プログラムや資格取得の流れなど、既存制度と大きな違いがあります。

今回は、新専門医制度の概要やプログラム、問題点などを詳しく解説します。より専門的な医療を提供できる医師や患者から信頼される医師を目指すために、ぜひ参考にしてみてください。

新専門医制度とは?いつから始まった?

新専門医制度とは、2018年度から開始された専門医の新しい認定制度です。第三者機関である日本専門医機構が専門医制度の運用を担っています。

それぞれの領域で適切な教育を受け、十分な知識と経験を持ち、患者から信頼される専門医を育成することが目的の制度です。

ここでは新専門医制度が導入された背景や旧専門医制度との違いについて、詳しく見ていきましょう。

新専門医制度が導入された背景

新専門医制度が導入された背景には、専門医の質が地域や診療科領域において異なり、医療格差が生まれていることが挙げられます。診療科領域ごとに専門医の質が異なるといわれる理由は、学会ごとに専門医の基準を定めてきたことにより、医療業界全体の基準が整っていなかったためといわれています。また、医療の地域格差により、患者が全国どこの病院でも安心して治療が受けられるわけではありませんでした。

患者が期待している専門医という医師像と、実際に医療を提供している専門医の質やレベルにギャップが生じていることも背景の一つです。

また、学会ごとに専門医の種類が増えてしまったため、標準的で信頼できる医療を受けたいと望む患者にとって、これまでは何を基準に専門医を選べば良いのか分かりにくい状態でした。

このように専門医の質がばらつき、医療の地域格差が生まれたことや、多種多様な専門医がいるため選ぶ基準が不明瞭だったことが、新たな制度が導入された背景といえます。

参照:厚生労働省「専門医制度の現状と課題 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会資料

新専門医制度と旧専門医制度の違い

旧専門医制度では、専門医の資格取得や制度の運用について、各領域の学会が独自で制度を構築していました。また、各診療領域の中でも細分化された学会が設立し、多種多様な専門領域を持つ医師が増えていることも問題でした。

この問題を解決するために、新専門制度では日本専門医機構を設立し、学科ごとの認定ではなく第三者機関の認定に変更することで、専門医制度の統一を行いました。

旧専門医制度は、病院で2年間の初期研修を受けて、専門領域の勤務を続けながら専門医の資格を取得します。

一方、新専門医制度では2年間の初期研修は同様ですが、その後3〜4年間で基本領域の中から1つ専門領域を選んで学びます。さらに、サブスペシャリティ領域に進むという2段階で研修を受ける流れです。

この新専門医制度の導入にあたり、研修医の呼び方も変化しています。初期研修医のみを研修医として、後期研修医は専攻医と呼ぶようになりました。

参照:厚生労働省「専門医制度の現状と課題 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会資料

新専門医制度のプログラム詳細

新専門医制度は、2年間の初期臨床研修を終えた医師が各専門研修のプログラムに応募し、専門医としての研修を受ける制度です。プログラムは、19の基本領域と細分化されたサブスペシャリティ領域の2段階構造になっています。

それぞれのプログラムについて詳しくみていきましょう。

19の基本領域

基本領域とは、内科や外科、小児科などの基本的な19の診療から構成され、専門医制度のベースとして定められている領域です。以下が取得できる基本領域です。

●内科         ●外科

●小児科        ●産婦人科

●泌尿器科       ●脳神経外科

●整形外科       ●形成外科

●耳鼻咽喉科      ●放射線科

●皮膚科        ●精神科

●救急科        ●麻酔科

●眼科         ●病理

●臨床検査       ●リハビリテーション科

●総合診療

19の基本領域から1つの領域を選択し、その領域で3年以上かけて研修を受ける必要があります。この選択した領域において、専門医取得の要件を満たす内容のプログラムがあり、必要な症例数や実績を積んでいくことが必須です。

19の基本領域それぞれの詳しい研修プログラムはこちらから確認してください。

サブスペシャリティ領域

サブスペシャリティ領域とは、19の基本領域をさらに細分化したもので、より専門性を発展・深化させた領域です。2023年7月時点では24の領域が定められています。

サブスペシャリティ領域で取得できる専門医は、以下の24種類です。

●消化器内科   ●循環器内科  ●呼吸器内科

●血液内科    ●内分泌代謝  ●糖尿病内科

●脳神経内科   ●腎臓内科   ●膠原病

●リウマチ内科  ●消化器内科  ●呼吸外科

●心臓血管外科  ●小児外科   ●乳腺外科

●放射線診断   ●放射線治療  ●アレルギー

●感染症     ●老年科    ●腫瘍内科

●内分泌外科   ●肝臓内科   ●消化器内視鏡

●内分泌代謝内科 ●糖尿病内科

これらの中から、自分が取得したい専門医を選び、さらに3年間の研修を受けます。ただし、サブスペシャリティ領域で消化器内科の専門医を取得したい場合は、基本領域でも消化器内科の専門医を取得する必要があります。

領域は自由に決められますが、基本領域とサブスペシャリティ領域は統一するといったルールが設けられているので、領域を選ぶ際は注意しましょう。

また、サブスペシャリティ領域は、今後さらに領域を拡大させることが検討されています。自分の進みたい領域をしっかりと考えることが大切です。

参照:日本専門医機構「サブスペシャリティ領域について

新専門医制度における専門医資格を取得するまでの流れ

新専門医制度における専門医資格の取得の流れは、以下のとおりです。

1. 専攻医登録
2. プログラムごとの試験
3. 基本領域の研修を受講
4. サブスペシャリティ領域の研修を受講

それぞれの過程について、詳しく説明します。

1.専攻医登録

専攻医とは、これまで後期研修医と呼ばれていた研修医のことであり、2年間の初期研修を終えた医師が登録できます。この専攻医登録を行うことで、新専門医制度の利用が可能です。

初期研修を終えた医師が、取得したい専門医資格の領域を決めた後、自分で申請を行います。申請先は、専攻医登録したい領域の学会ホームページや日本専門医機構のホームページ、どちらかのフォームです。

2.プログラムごとの試験

専攻医登録をしても、すぐに基本領域の研修が受けられるわけではありません。登録後に試験の案内が届くため、まずはプログラムごとの試験に合格することが必要です。

実施される試験や選考基準は、診療科領域ごとの規定があり、試験や面接などを経て、基本領域の研修を受けられるか否かを決定します。

一次募集と二次募集がありますが、それぞれ応募できる研修プログラムは1つの領域とされているため、領域の選び方には注意しましょう。ただし、一次で不合格でも二次に再び応募できるため、2回まで挑戦できます。

3.基本領域の研修を受講

プログラムごとの試験に合格したら、次に基本領域の研修を受けることになります。基本領域の研修は、領域ごとに定められたプログラムに沿って、3年以上の研修が行われます。

受講後に基本領域の専門医資格を取得できますが、取得するためには必須の要件があります。どの領域においても、決められた症例数や論文数などを満たす必要があり、さらに筆記試験などの試験にクリアすることで資格取得できる流れです。

次のサブスペシャリティ領域の専門医を取得するためには、基本領域の研修を合格し、修了しなければなりません。

4.サブスペシャリティ領域の研修を受講

基本領域の専門医資格を取得した医師のみが、サブスペシャリティ領域の研修が受けられる仕組みです。

より専門性を深めて専門医資格を取得したいと希望する医師は、サブスペシャリティ領域の研修を3〜4年ほど受講することが求められます。必要な研修を終えた後に、サブスペシャリティの専門医資格が得られます。

なお、複数のサブスペシャリティ領域の同時受講は、基本的に認められていません。しかし、サブスペシャリティ領域の一部の領域が他のサブスペシャリティ領域の専門研修と重複していることが明確であれば、複数のサブスペシャリティ領域の専門研修を受けたとみなすことを可能としています。

上記を認めてもらうにはいくつかの条件がありますが、複数のサブスペシャリティ領域の研修を必ずしも受けられないというわけではありません。

まずは、ひとつの領域の専門性を発展させ、深めることを重視しているため、どの領域を専門にすれば良いのか初期研修の頃から十分に考えることが大切です。

参照:日本専門医機構「サブスペシャリティ領域専門研修細則

新専門医制度の問題点

2018年度からスタートした新専門医制度は、専門医の質を向上・統一化できることや地域の医療格差を解消できることなど、さまざまな問題を解決するための制度とされています。

しかし、新専門医制度の問題点や課題の指摘もいくつか出てきています。また、制度を利用する医師が増えるにつれて検討すべきことも出てくるでしょう。

新専門医制度の問題や課題としては、以下の点が挙げられています。
● 専門医が都市部に集中する
● ライフイベントとの両立が難しい
● 診療科目によって資格取得までの年数や難易度が異なる

医療の地域格差を解消するための制度ですが、新専門医制度の研修が受けられる病院は都市部に集中しているという問題があります。

また、研修先によっては生活の拠点やライフスタイルを変える必要があり、研修と私生活の両立が難しいと感じる医師は多いでしょう。

2年間の初期研修後に3年の基本領域の研修があり、サブスペシャリティ領域に進む場合はさらに3〜4年の研修を受ける必要があります。最終的に専門医を取得するために、合計6年間かかることになるのです。

このように、新専門医制度にはいくつかの問題や課題があるので、これから制度を利用する医師は常に新しい情報をキャッチすることが大切になります。

関連記事:新専門医制度の課題や問題点は?今後の動向をわかりやすく解説

新専門医制度のメリット

新専門医制度にはさまざまな問題点や課題が挙げられますが、医療の質を向上させ、患者に安心感を与えられるメリットが多い制度です。

主に、以下のメリットがあります。

● 医師としてのスキル向上・モチベーションアップにつながる
● 患者にとってはどの医師に診てもらえば良いかが明確になる
● 専門医の質が統一されて地域格差が解消される
● 公に定められた制度として国民に広く認知される
● 適切な教育を受けて十分な知識と経験を持った医師が増える

このように、新専門医制度によって標準的な医療を提供できる医師が増えることで、今後の医療の発展と進化が期待できるでしょう。

まとめ

新専門医制度は、第三者機関により認定基準が統一され、専門医が提供する医療の質に偏差が生まれないように定められた制度です。基本領域とサブスペシャリティ領域の2段階で研修を受け、十分な知識と経験を得た専門医の充足を目的としています。この制度を利用して、自分の希望する領域において専門医を取得したい医師は増えてくるでしょう。

これから新専門医制度を利用し、専門医資格を取得してキャリアアップを図りたいと考えている医師はもちろん、専門医研修が受けられる病院を探しているという医師は、「メディカルジョブ」がおすすめです。

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転職を検討している場合、まずは「メディカルジョブ」に気軽にご相談ください。

新専門医制度の課題や問題点は?今後の動向をわかりやすく解説

新専門医制度は、2018年度から始まった専門医の新しい認定制度です。19の基本領域とサブスペシャリティ領域の研修プログラムがあり、それぞれの専門医資格を取得できます。

しかし、制度が始まって以来さまざまな問題点や課題が指摘されており、今後も改訂を繰り返す可能性があるでしょう。

今回は、新専門医制度の現状を踏まえた課題や問題点について詳しく解説します。課題解決に向けた今後の情報をキャッチできるように、ぜひ参考にしてみてください。

新専門医制度とは

新専門医制度とは、2018年度に開始された専門医の新しい認定制度です。これまでの専門医制度では、領域ごとに学会が独自で認定制度を構築していたため、専門医の質にバラつきがありました。

そのため、新専門医制度は、第三者機関の日本専門医機構が基準を定め、専門医の質の統一化を目指す目的で設けられた制度です。

専門医資格の取得には、2年間の初期臨床研修を終えた医師が各専門研修のプログラムに応募する必要があります。また、このプログラムの応募には専攻医登録のほか、試験や面接などに合格することが必須条件です。

合格した専攻医は、研修プログラムに参加できます。プログラムは2段階構造であり、19の基本領域と細分化されたサブスペシャリティ領域において研修を行います。それぞれ3年以上かけて研修するため、初期研修後からサブスペシャリティ領域の研修修了までに最短でも6年の期間が必要です。

関連記事:新専門医制度とは?いつから始まった?既存制度との違いをわかりやすく解説

専門医制度の現状

新専門医制度は、医療におけるさまざまな問題を解決する制度として定められました。しかし、プログラムの研修を受けられる病院や研修を実施している領域は、地域によって偏差があります。そのため、採用される専攻医においても地域偏差があるのが現状です。

2023年度に採用された専攻医の数について、以下の表を参考にしてみてください。専攻医の採用人数が多い都道府県の上位3位までをまとめています。

採用された専攻医の合計(最多の領域、最小の領域)
1位 東京都 1,832名(内科537名、臨床検査6名)
2位 大阪府 676名(内科215名、臨床検査3名・総合診療3名)
3位 神奈川県 665名(内科216名、臨床検査1名)

出典:日本専門医機構「2023年 採用数

東京都に次ぐ大阪府では専攻医の総数が東京都の2分の1以下であり、都市部であっても採用されている人数差は歴然です。しかし、上位3都府県は19の基本領域すべての専攻医を1人以上採用できています。1人も専攻医を採用できなかった領域がある県も複数あるので、このデータを見ても大都市圏に医師が集中してしまっている現状であることがわかるでしょう。

次に、専攻医の採用人数が少ない都道府県について、少ない方から3番目までを以下にまとめています。

採用された専攻医の合計(最多の領域、最小の領域)
47位 徳島県 38名(内科9名、小児科0名・眼科0名・泌尿器科0名・放射線科0名・臨床検査0名・リハビリテーション科0名)
46位 島根県 40名(内科7名、小児科0名・耳鼻咽喉科0名・病理0名・臨床検査0名・リハビリテーション科0名)
46位 香川県 40名(内科13名、眼科0名・耳鼻咽喉科0名・泌尿器科0名・病理0名・救急科0名・リハビリテーション科0名)

出典:日本専門医機構「2023年度 採用状況

地方になるほど専攻医がいない診療科領域が増え、地域による採用の偏差がわかります。

また、地域によって研修プログラムがない診療科領域もあります。2023年度の時点で、島根県では形成外科領域、香川県では臨床検査領域の研修が受けられません。島根県、香川県だけではなく、10の県で研修プログラムそのものがない領域が存在しています。

このように、新専門医制度ではいくつかの課題や問題点が見えてきています。専攻医に登録する医師は、制度の課題や問題点についても把握することが大切です。

新専門医制度における課題や問題点

新専門医制度における問題点は、現時点で以下の5つが挙げられます。

● 専攻医が都市部に集中してしまう
● ライフイベントとの両立が難しい
● 診療科によって資格取得までの年数や難易度が異なる
● 研修時の施設移動が頻繁に起こる可能性がある
● 特定の専門医の不足が懸念される

ここでは、上記に挙げた5つの問題点について見ていきましょう。

専攻医が都市部に集中してしまう

専門医資格の取得には、専攻医に登録して診療科領域の研修プログラムを受講する必要があります。

しかし、研修プログラムを実施している病院は都市部に多く、地方には少ないのが現状です。さらに、進みたい領域の研修が受けられない地域もあり、大きな地域偏差が生まれています。

そのため、地方の病院で初期研修をしていた医師たちが、希望する領域の研修プログラムがある都市部に移動するという現象が起きるのです。その結果、専攻医が都市部に集中し、地域によって専攻医の数に差が出ることが問題となっています。

専攻医が都市部に集中すると、ある地域の特定の領域において専攻医がいなくなり、地域医療の現場では医師不足などの問題が起きる可能性もあるでしょう。

ライフイベントとの両立が難しい

新専門医制度では、勤務先と研修先の病院が異なります。研修を受けるために、生活拠点を変える必要があり、ライフイベントとの両立が難しくなるのです。

専門医資格を取得したくても、家庭の事情により居住している場所から離れられない医師もいるでしょう。そうなると、自分が働いている病院に研修プログラムがない場合、専門医になることを諦めなければならないという問題も生まれます。

その結果、地方の医療に貢献したい医師や自分のキャリアを真剣に考えている医師への機会損失につながるでしょう。

女性医師の中には、専門医資格の取得を目指したいという向上心のある人も多いのではないでしょうか。しかし、女性にとって出産や育児などのライフイベントは、仕事との両立に影響を与える可能性があります。

両立の難しさが原因で、女性医師のキャリアアップが実現できないことも制度の大きな問題点といえるのです。

診療科によって資格取得までの年数や難易度が異なる

新専門医制度では、各領域の学会が研修プログラムを整備しています。専攻医登録の後に受ける試験や面接においてもプログラムごとに選考基準を定め、採用の段階から診療科による差があるでしょう。

研修プログラムは、領域ごとに到達目標や研修方法、評価の方法、認定基準が設定されています。そのため、診療科によって資格取得できる難易度が異なるという問題が生まれてしまうのです。

また、サブスペシャリティ領域では、一部領域のみ連動研修が認められています。連動研修とは、基本領域の専門研修をサブスペシャリティ領域の一部の研修とみなすことができる制度です。そのため、通常は最短でも6年かかるサブスペシャリティ領域の研修の期間を、短くできる可能性があるといえます。

資格取得までの年数が短縮できるのはメリットですが、すべての領域で認められているわけではありません。また、連動研修として認めてもらえる基準も領域ごとで異なってきます。そのため、できるだけ早く専門医資格を取るために、連動研修が認められた領域で研修を受けようとする医師も増えるでしょう。

研修時の施設移動が頻繁に起こる可能性がある

新専門医制度における基本領域の研修では、基幹施設と連携施設などによる研修施設群が形成されていることが制度の特徴です。この基幹施設には大学病院や中核病院などを選定し、連携施設には地域の病院が協力する形で構成されています。

専攻医は常に基幹施設と連携施設を移動し、ローテート研修を受ける必要があるのです。住んでいる地域によっては施設移動が頻繁に起こる可能性があり、専攻医に大きな負担がかかるでしょう。

ローテート研修が行われる理由として、専攻医が受ける研修の質の担保や地域医療の活性化などがあります。

ただし、研修先によっては、医師の生活拠点を変えなければなりません。その結果、家庭と仕事の両立に悩む医師や施設移動を負担に感じる医師が増えてくるでしょう。

その結果、医師が本来希望する地域や領域ではなく、施設間の移動距離が短い地域を選ぶ人が増え、専攻医が都市部に集中する問題がさらに加速することも考えられます。

特定の専門医の不足が懸念される

新専門医制度が始まって以来、地域による専攻医の採用人数に大差が生まれている現状があります。

都心部においては、19領域すべての基本領域で研修プログラムを受講している専攻医がいるのに対し、地方では専攻医がいない領域が数多くあります。

都道府県や領域によって、専攻医の数にバラつきが生まれていることは、将来的に特定の専門医が不足する可能性も示唆しています。

特に、医師の数が減少している外科や産婦人科では、今後専門医がいなくなる地域も出てくる可能性があると懸念されています。専門医の数が充実している都市部から、専門医がいない地域への医師派遣により一時的に問題は解決できますが、根本的な解決には至りません。

その結果、特定の領域における医療の地域格差が生まれ、地域医療が適正化されないなどの問題が生まれる可能性があるといえるでしょう。

参照:内閣府「医師総数の増加と地域偏在の状況

課題解決に向けた今後の動き

新専門医制度においてさまざまな問題点が指摘されているなか、専攻医の極端な偏在や地域医療への影響などが生まれないように制度の見直しが行われています。

今後、新専門医制度がどのように進んでいくのか動向を追うことが重要です。ここでは、厚生労働省と日本専門医機構が出している今度の動きについて説明します。

厚生労働省

厚生労働省では、地域医療構想や医師偏在対策、医師の働き方改革を重視して「医師確保計画」を策定しています。医師確保計画は3年を1期と据え、2024年度からスタートする計画に向けて、主に以下のような目標が検討されています。

● 2036年を目標に医師偏在の解消
● 産科や小児科など医師が減少している領域における医師の確保
● 医療圏を超えた地域間の連携
● 診療科ごとの将来必要となる医師数の算出

これらの目標達成するために策定された医師確保対策では、都道府県内における医師の派遣を行い、地域の医師不足解消を目指すほか、医師のスキルアップの機会を確保するためにキャリア形成プログラムの策定を打ち出しています。また、医学部における地域枠・地元出身者枠の設定などが計画されています。この計画は都市部に医師が集中するのを防ぐための施策です。

厚生労働省では期間ごとに見直しや修正しながら長期的な取り組みが実施しており、地域による医療格差や医師の偏在、医師不足などの問題が徐々に解消していくでしょう。

参照:厚生労働省「医師確保計画策定ガイドライン
参照:厚生労働省「第8次医療計画、地域医療構想等について

日本専門医機構

日本専門医機構では、新専門医制度の適正な運用と地域による医師偏在対策を重視し、課題解決に向けた計画を進める方針があります。

主な課題として、以下の点が挙げられます。

● サブスペシャリティ領域の拡大
● 領域別のシーリング効果

サブスペシャリティ領域は今後も拡大が見込まれていますが、どの領域や学会を認定すべきか慎重に審査する必要があるでしょう。

また、必要な医師数を確保するためには、子育て世代のサポートや地域偏差を解消できるシーリング制の効果が期待されます。

日本専門医機構では、制度の運用や課題解決に向けた取り組みが行われており、どの地域にいても信頼できる専門医から標準的な医療が受けられる体制が期待できるでしょう。

参照:日本専門医機構「2021年度(令和3年度)事業報告書

まとめ

新専門医制度は、2018年から始まった新しい専門医の認定制度であり、スタートしてから地域偏差や医師の確保、適正な制度の維持などさまざまな問題が指摘されています。

数多くの課題に対して、厚生労働省や日本専門医機構では慎重に審議を重ね、長期的な計画の策定と課題の解決に向けた取り組みが実施されています。今後、専門医の資格取得を目指す医師のスキル向上や働きやすい体制が可能になるでしょう。

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