現在、医療機関で働いている医師の中には、転職を考えている、あるいは将来的には転職したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、転職時によくある失敗例や転職で後悔しないためのポイントを紹介します。転職に先立って本記事の内容を理解しておけば、「こんなはずじゃなかった」という失敗を防いで、転職を成功させられるでしょう。
医師転職によくある失敗例
医師の転職でよくある失敗例には、以下の6つが挙げられます。
- 転職先での職場の人間関係が合わない
- 思っていたよりも激務だった
- 勤務形態が聞いていた内容と違った
- 年収が下がってしまった
- 仕事内容がイメージと違った
- 知人の紹介のため辞めにくい
医師の転職の失敗例として多く挙げられるのが、収入、仕事内容、労働時間や勤務形態などが転職前のイメージや希望と大きく異なってしまったというケースです。
実際に、Dr.転職なびでは転職経験のある医師に転職に失敗したと思う理由についてアンケート調査を行いました。
引用:Dr.転職なび|45%が「失敗」の経験あり…医師が転職で後悔しないための3つのポイント
アンケートで最も回答が多かったのは、「職場の人間関係・雰囲気が合わない」でした。この結果から求人情報だけでは得られない部分も、よく確認しておく必要があることがわかります。
それでは転職でよくある失敗例をもとに、転職活動を始める際に確認しておくべき点を解説します。
転職先での職場の人間関係が合わない
医療機関であっても対人関係による悩みは多く、転職先の医局内での上下関係や派閥争いも珍しくありません。また、現在のチーム医療を進める上では、看護師、薬剤師、放射線技師や臨床検査技師といったメディカルスタッフとのコミュニケーションが欠かせません。現場で人間関係が合わないと、診療そのものに悪影響が出てしまうこともあります。
そのような事態にならないためには、情報収集が欠かせません。転職先に同じ医大の先輩・後輩などがいたら話を聞いたり、病院見学時に雰囲気をチェックしたりするようにしましょう。
思っていたよりも激務だった
入職してみたら、「残業・当直がばかりで、家に帰れない」「以前より500万円年収が上がったけど、お金を使う時間がないほど忙しい」など、思っていたよりも激務だったケースも少なくありません。転職時に年収の高さばかりに目を奪われ、勤務時間や勤務条件をあまりチェックせずに転職してしまうと、このような失敗に陥りがちです。
好待遇なのは良いのですが、相場よりも年収が高い場合は、それなりの長時間労働をすることになるケースもあるので、気をつけましょう。
勤務形態が聞いていた内容と違った
入職前に聞いていた勤務形態と違っていたというケースでは、「希望する曜日とは異なる勤務日を担当することになった」「想定より当直勤務が多かった」「急患対応のオンコールが多い」といった例が挙げられます。
どのケースでも、転職時に勤務条件を書面で提示してもらうことで、勤務形態に関する認識のズレを防ぐことができます。なお、「労働基準法第15条第1項」には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定されおり、採用時に書面で交付することを義務付けています。
年収が下がってしまった
これまでの働き方で激務が続いてきたことから、労働時間が短い転職先を選んだり、プライベート時間を重視しすぎる勤務条件を選んだりして転職してしまうと、年収が下がってしまうことがあります。これまでの年収の水準を引き上げてきた残業時間が減ることが原因で、思っていた以上に年収が下がってしまう可能性も出てくるでしょう。
転職先の給与体系がどのようになっているのかを見極め、労働時間の減少が年収の減少につながらないかを考慮して、転職先を選ぶことが大切です。
仕事内容がイメージと違った
仕事内容がイメージと違ったという事例では、希望した診療科目であっても、医療機関によっては外来診療ばかりであったり、訪問医療を任されたりするケースもあります。
また、キャリアアップを狙って「多くの症例や手術を経験したい」「先進的な術式を習得したい」という希望があっても、在籍する指導医がいなかったり、医師の人数や経験年数によっては、任せてもらえなかったりすることもあります。
希望する先進的な医療機器が導入されているか、指導医はいるか、どの程度の手術や症例を任せてもらえるかなど、面接や見学時に確認しておくようにしましょう。
知人の紹介のため辞めにくい
知人に紹介してもらって転職するパターンでは、転職先の実態が「聞いていた話と違う」と感じても、紹介してくれた知人の面子を立てる必要もあるため、辞めにくいと感じてしまいます。
たとえ知人からの紹介でも、自分の目で職場環境を確認したり、雰囲気を感じたりすることが大切です。また、気を遣って、面接時に条件面について確認することを怠ってしまうと、実際に働いてみてギャップを感じてしまうことになりかねません。
医師が転職で失敗してしまう原因
医師が転職で失敗してしまう原因は、以下2つが挙げられます。
- 自己分析が不十分だった
- 転職先の情報収集不足
失敗の原因をしっかり押さえておくことで、転職の失敗を防げる可能性が高まるでしょう。
自己分析が不十分だった
職場に何を求めているか、将来的なキャリアはどうするかを深く考えないまま転職活動をしてしまうと、失敗を引き起こしてしまいます。
現在抱えている悩みを解消することはもちろんですが、目先の不安や不満を取り除くためだけに転職活動をしていると、別の不満が生じることもあります。年収や勤務条件などの条件だけを考えるのではなく、新しい職場に何を求めるのか、スキルアップなのか、人間関係や雰囲気の良さなのかを転職活動を行う前によく考えておきましょう。
さまざまな角度から自分を見つめ直して、自分の将来を考えておくことで、新しい職場で万が一別の不満が出てきても、対処できるようになります。
転職先の情報収集不足
転職先の情報収集が不足していることも、失敗の原因になります。日々忙しい中で転職活動を行うとなると、転職先を時間をかけて吟味しなかったり、とにかく早く転職したいと焦って条件もあまり見ずに決めてしまったりすることもあるでしょう。
実際の職場の雰囲気や人間関係など求人情報からではわからない情報も、よく探して確認する必要があります。
もし知り合いがいる病院なら、知り合いに聞いてみましょう。もしくは、転職エージェントを活用して情報を得ることも大切です。
病院見学などを設定してもらえるのではあれば、積極的に利用しましょう。できる限り情報を集めておくことが、転職活動での失敗を減らすためにも重要です。
医師が転職で後悔しないためのポイント
次に、医師が転職で後悔しないためのポイントを押さえておきましょう。主なポイントは、以下の5つです。
- 転職に求める優先順位を決める
- 自己分析を行う
- 情報収集を十分に行う
- 焦って転職先を決めようとしない
- 転職エージェントを活用する
医師の転職で後悔しないためのポイントは、なぜ転職をするのか、自分はどんな働き方をしたいのかを明確にしておくことです。そこからどんな医療機関が自分に向いているのかを探り、面接や病院見学などを通じて、自分が実際に働く職場を確認して、事前のイメージや条件とマッチするかを確認するようにしましょう。
転職を成功させるためには情報収集がカギになってきます。採用条件もしっかり確認しておくことが重要です。
転職に求める優先順位を決める
転職を成功させるコツは、まずは転職に求める優先順位を決めることです。収入面を重視するのか、スキルアップを目指すのか、それともワークライフバランスを重視するのかを決めることによって、転職時のミスマッチを防ぐことができます。
そのためには、現状についてどんな不満があるのか、転職によって実現させたいことは何か、具体的な条件面などを書き出してみるとよいでしょう。漠然と考えていた転職のイメージが具体的になり、転職先選びもしやすくなるはずです。
自己分析を行う
優先順位を決めるためには、より詳細な自己分析が必要です。自己分析を行わずに転職活動を行うと、後悔することにつながりかねません。自己分析ができていないと、転職活動にブレが生まれたり、迷いが生じたりしてしまい、転職を成功させることが難しくなります。
自己分析では、以下のような項目について自己分析シートを作成し、自分の転職についての意識を深掘りするとよいでしょう。
- なぜ、転職活動をしようと思ったか
- 現職場を選んだ理由や、選択した基準は何か
- 現職場に対する不満は何か、その理由は
- 転職先の医療機関を選ぶ上で、欠かせない条件を最低3点と、その理由は何か
- 転職によって実現したいことは何か、またその理由は
- これまでの医師としての経歴や強みは何か
情報収集を十分に行う
医師の転職には、転職先の医療機関についての情報収集を十分に行うことが大切です。医療機関のWebサイトからもある程度概要を知ることはできますが、それだけでは十分な情報収集とはいえません。
医学誌や学会などを通じて情報収集することで、どんな領域に強みがある医療機関なのか、どんな臨床研究を行っているかを知ることができます。また、在籍している医師の専門分野についても知ることができるでしょう。
さらに、同じ医大の先輩・後輩が在籍していれば、より詳細な話を聞くことができます。施設見学を通じて、職場の雰囲気、どんな医療機器を使っているかなどをチェックするようにしましょう。
焦って転職先を決めようとしない
焦って転職先を決めようとしないことも、大切なポイントです。焦ってしまうと、自己分析や情報収集を十分にできず、目先の条件だけに目を奪われてしまいがちです。
転職を成功させるためには、1年ほど前から以下のように入念にスケジュールを立てて転職活動を進めることをおすすめします。
- 1年前~
- 自己分析を行い、希望条件を明確にする
- 情報収集を行う
- 履歴書作成
- 家族や友人に相談
- 半年前~
- 求人への応募
- 面接・施設見学
- 内定
- 3か月前~退職まで
- 退職通知・交渉
- 職務引継ぎ
転職先の採用条件について必ず確認する
医師の中には知り合いからの紹介で転職先を決めることもあるでしょう。紹介の場合も転職エージェントを利用する場合も、採用条件は必ず確認しておくことが大切です。
特に知り合いからの紹介で転職する場合は、口約束になりがちです。労働条件や給与などを明文化し、必ず書面で確認するようにしましょう。
病院と自分の間で認識のずれが起きないようにするためにも事前確認を行うことが重要です。採用条件を確認し、転職失敗を未然に防ぎましょう。
転職エージェントを活用する
医師の仕事は忙しく、自分一人で転職活動を進めることが困難な人もいるでしょう。そのような場合は、転職エージェントを活用しましょう。医師の転職に特化したエージェントが、医師と医療機関の間に入って、転職をサポートしてくれます。
転職エージェントに登録すると、キャリアアドバイザーが医師一人ひとりの希望条件についてヒアリングし、その希望に合った医療機関を紹介してくれます。キャリアアドバイザーは、医療機関側のニーズも把握しているため、双方の希望にマッチングするよう心がけます。しかし、必ずしもすべての条件が合うとは限りません。そこで、譲歩できる点やできない点をキャリアコンサルタントに相談することで、医療機関と交渉してもらえるのです。
もし、エージェントを使わず転職活動を行うと、求人探しから交渉まで自分一人で行うことになります。転職エージェントに登録するなら、医療業界の転職に豊富な実績を持つ「メディカルジョブ」がおすすめです。
まとめ
今回は、医師が転職する際のよくある失敗例や、転職で後悔しないためのポイントについて詳しく紹介してきました。本記事を参考に、ぜひ希望通りの転職を成功させてください。
忙しくて転職活動がうまくできないという場合には、転職エージェントの活用がおすすめです。キャリアアドバイザーが医師の皆さまのきめ細かなニーズを汲み取り、最適な医療機関の紹介から面接への同行、転職後のフォローまで行ってくれる「メディカルジョブ」に、まずは登録してみてはいかがでしょうか。