医師の仕事は収入が多いと思われがちですが、人の命にかかわる分、責任も重く、ハードワークはつきものです。その対価としての報酬に満足できず、副業を考えている医師もいると思います。
ここでは、医師の副業にはどのようなものがあるのか、どのくらい年収アップを期待できるのかなど、副業を始める前に知っておきたい情報についてまとめました。
医師は副業できる?
近年、働き方改革が進み、多くの企業で副業を許可しています。医療業界でも副業を解禁するところが増えつつありますが、公的な病院などで働いている場合、副業がNGとされるケースもあります。そのため、副業を始める際には、就業規程を確認しておくことが大切です。
医師におすすめの副業
ここからは、医師におすすめの副業を紹介していきます。まず、副業の種類別に、リスク・利益性・難易度についてまとめてみました。
副業 | リスク | 収益性 | 難易度 |
定期非常勤 | 比較的低い | 比較的高い | 比較的低い |
スポットアルバイト | 比較的高い | 高い | 比較的低い |
医療系セミナーの講師 | 比較的低い | 比較的高い | 比較的高い |
オンライン健康診断 | 比較的低い | 比較的低い | 低い |
医療系記事の執筆・監修 | 比較的低い | 低い | 低い |
フリマアプリ | 低い | 低い | 低い |
不動産投資 | 比較的高い | 比較的低い | 比較的高い |
FX | 比較的高い | 比較的低い | 比較的高い |
株式投資 | 比較的高い | 比較的低い | 比較的高い |
医師におすすめの副業は、大きく分けると、医師の資格や経験を生かせる仕事と、そのほかの職種に分けられます。資格を生かし、収入アップとキャリアアップを同時に図りたい場合、定期非常勤、当直などのスポットアルバイト、オンライン健康診断、医療系記事の執筆・監修などがおすすめです。少ない時間を有効活用して収入アップを図りたい場合は、フリマアプリや不動産投資、FX、株式投資などがおすすめです。
定期非常勤
定期非常勤とは、常勤先と別の医療機関で定期的に勤務する働き方です。業務内容は勤務先によって異なりますが、一般的には、通常の診察業務を担うことになります。また、安定した副業収入(相場は時給1万円〜)が得られる点もメリットです。さらに、さまざまな症例を診る機会にもなるので、医師としてのスキルアップと収入アップとの両方が期待できます。
しかし、同一施設で1週間32時間以上勤務すると常勤扱いになるため、勤務時間には注意しなければなりません。
スポットアルバイト
スポットアルバイトとは、一日あるいは一定の時間だけ、単発で医師として勤務することです。時給や日給が高めで、空いた時間を有効活用して収入を得ることができます。
仕事内容としては、例えば、健康診断、長期休暇をとっている医師の代診、ワクチン接種、当直などが挙げられます。ちなみにスポットでの当直アルバイトの報酬は、常勤先で当直を行う場合と比べて、相場が2~5倍の報酬になる(3万~10万円程度)ともいわれています。常勤先と別の環境でさまざまな医療現場を体験する機会にもなるので、キャリアアップにもつながります。
ただし、勤務先がいつも異なる施設になるため、行く先々で臨機応変に対応できるコミュニケーション力・判断力が必要となります。また、スポットアルバイトはお盆休みや年末年始などの人手不足を解消する目的で募集されることが多いため、副業したい時期に募集がないこともあります。そのため、スポットアルバイトを希望の場合、求人情報サイトなどで募集情報をこまめにチェックしましょう。
医療系セミナーの講師
専門分野の知識や臨床経験での実績がある医師は、副業として医療系セミナーの講師をする方法もあります。一般企業や製薬会社をターゲットにした仕事なので、業績をアピールする機会としてもおすすめです。知名度が上がり、書籍の出版依頼などにつながれば、多額の収入を得ることも期待できます。
リスクとしては、レクチャーするための資料作成に時間と労力がかかることや、プレゼンテーション能力、コミュニケーションスキルなどが求められることが挙げられます。また、企業や製薬会社に注目してもらうため、自身でセミナーを企画するなどして積極的に営業活動することも大切です。
オンライン健康相談
Zoomなどのオンライン会議システムを利用した診療や健康相談を副業とする方法もあります。近年では、プライバシー保護などの観点から、AGAや美容に関するお悩み、睡眠障害、禁煙などのオンライン診療が導入されています。また、オンライン診療・健康相談は全国各地から受診でき、かつ医師も在宅ワークとして常勤の勤務時間外に行えるため、患者さんからも医師からも注目が高まっています。
ただし、こうした副業を行うためには、インターネット環境が整っている必要があります。また、競争率が高ため、安定した副業収入を得ることが難しいかもしれません。オンライン健康相談を副業にしたい場合は、まず、医師専門の求人サイトに登録し、こまめに情報を収集して機会を狙いましょう。
医療系記事の執筆・監修
近年、インターネット上では、医療や健康に関するさまざまな情報が公開されていますが、なかには、医学的に誤った情報が含まれていることも少なくありません。そのため、医師が執筆・監修した、信頼度の高い医療・健康関連の記事のニーズが高まっています。
単価は1文字3~10円程度、1記事5,000~5万円程度が相場で、そう高くはありませんが、執筆者として氏名や経歴などを掲載できるので、知名度を上げるにはよい機会となります。また、医師が自ら執筆する時間をとれない場合、監修者として記事をチェックするだけでも副業収入を得られます。
ただ、依頼案件を探すのが難しい点がデメリットです。そのため、普段から製薬会社をはじめ、インターネットメディアとのつながりをつくっておいたり、医師キャスティングサービスやクラウドソーシングなどに登録したりして、機会を狙いましょう。
フリマアプリ
医師の資格にこだわらずに副業をしたい場合、フリマアプリを活用する方法があります。勤務先が公的な病院の場合でも、営利目的でない活動であれば、副業収入を得ることは可能です。特にスキルも必要ないので気軽に始めやすく、空いた時間に収入を得られる点はメリットです。
ただし、副業としフリマアプリを利用する場合は、不用品を売る目的でのみ使用することが条件です。そのため、安定した収入を継続して得ることは難しいでしょう。
不動産投資
医師の副業として、資産運用をするのも一つの手です。勤務先が副業を解禁していなくても、資産運用は副業とみなさないとするケースがあるからです。
資産運用の代表例としては、不動産投資があります。不動産投資とは、マンションや一軒家などの不動産物件を購入し、家賃で収入を得ることです。不動産投資ローンには審査がありますが、医師は平均収入が高く、社会的地位も認められているため、通りやすい傾向にあります。また、不動産投資は、働かずして毎月安定した家賃収入が入ってくる点がメリットといえます。
デメリットとしては、投資に関する知識がある程度ないと、好条件の物件を見極めるのが難しく、場合によっては多額の負債を抱えてしまうことです。
FX
多忙な毎日を送る医師にとって、FXで副収入を得るのも一つの手段です。
FXとは、例えば、日本円で外貨を買ったり売ったりしたときに生じる差額を利益とする取引のことです。システムトレードや自動売買ツールを利用すれば、チャートを自分で確認しなくても取引できるので、すき間時間を使って副収入を得られる可能性があります。
ただし、FXは値動きが激しく、自身でこまめに値動きをチェックしなければ、好条件での取引は狙えない点や、運用リスクも高い点から、多忙な医師には難しいかもしれません。
株式投資
医師の副業として、より始めやすいのは株式投資です。最近では、NISAをはじめ、非課税で始められる投資制度もあります。また、企業の個別銘柄に投資する場合は、配当金などの収入を得ることも可能です。売却時の価格が購入時よりも高くなるタイミングを狙えば、その差額で高利益を得ることができます。
デメリットとしては、初期費用がかかることや、元本を失う危険がある点が挙げられます。また、iDeCoなどの投資制度の場合は、所定の年数が経過するまで投資した資金を引き出せません。そのため、株式投資を副業とする場合には、事前に上手に運用するための知識を得ることが不可欠です。
医師が副業する際の注意点
医師が副業をする場合は、次のことに注意しなければなりません。
- 就業規則を確認する
- 副業で年間20万円以上収入がある場合、確定申告を行う
- 副業のリスクについても十分に理解しておく
以下で詳しく説明していきますので、リスクをしっかりと理解したうえで副業を始めましょう。
副業を始める前に就業規則を確認すること
まず、副業を始める際は、勤務先の就業規則をしっかりと確認しましょう。なお、勤務先にかかわらず、初期研修医(2年間の臨床研修期間)は医師法によりアルバイトや副業が禁止されています。その他、公立病院の勤務医は公務員にあたるため、初期研修医でなくても副業は原則禁止です。違反すると懲戒処分を受けるので注意しましょう。
また、就業規則で副業自体が禁止されていない場合でも、副業する際に、書類などの届出を求められるケースがあります。事前に勤務先に相談しておきましょう。
参照:医師法第16条の2
副業で年間20万円以上収入がある場合、確定申告が必要
副業による収入が年間20万円以上になる場合は、確定申告が必要です。勤務先が複数ある場合は、特に注意しましょう。例えば、年末調整されない金額と、その他の収入額の合計が年間20万円を超える場合も申告が必要です。その他、常勤先の収入が2,000万円を超える場合も確定申告をしなければなりません。申告を怠ると、ペナルティを課せられる可能性があるので、十分に注意しましょう。
なお、副業による収入が多い場合は、節税対策のため、個人事業主として青色申告することをおすすめします。ただ、青色申告を行う場合、複式簿記での記帳や帳簿の保管が必須となります。手続きに自信がない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
副業を行うリスクについても理解しておくこと
医師の仕事は、ちょっとした判断ミスでも人の命に関わるため、責任は重大です。副業をする際には、本業に支障をきたさないよう注意しなければなりません。仕事内容としては難しくない副業でも、移動に時間がかかったり、睡眠時間を削ったりする業務は、予想以上に体力や気力を奪われます。疲れた状態で本業での信頼を損なうことがないよう、バランスをうまく取りながら収入アップを目指しましょう。
まとめ
医師が副業で効率よく収入を増やすために、医師の資格を生かしたアルバイトをしたり、医療系の記事の執筆や監修などで収入を得たりする方法を紹介しました。また、医師の資格にこだわらず、各種投資で利益を上げる方法についても解説しています。これらのことを参考にしつつ、ワークライフバランスをうまく取りながら収入アップを目指しましょう。