病理医とは、患者から採取した細胞や組織を分析し、疾患の確定診断を行う医師のことです。Doctor of Doctors(医師のための医師)ともいわれ、医療現場に欠かせない存在ですが、一般的にあまり知られていない存在でもあります。
今回は病理医の平均年収について解説します。また、年収が低いといわれてしまう理由やさらに年収を上げる方法についても紹介します。
病理医になろうと考えている医師や転職を考えている病理医は、キャリアプランを考える際の参考にしてみてください。
病理医の平均年収
病理医とは、病気の原因や経過、予後などを組織や細胞のレベルで調べる医師のことです。病理医は、患者と直接対面することは少なく、病院の病理診断科や研究機関などで働いています。病理医は、病気の診断や治療の指針を提供する重要な役割を担っています。
では、病理医の平均年収はどのくらいなのでしょうか。
リクルートドクターズキャリアの調査によると、病理医の平均年収は約1,000~2,000万円とされています。男性は1,500万円~2,000万円未満の割合が全体の57%で、女性は1,000万円未満と1,000~1,500万円未満の割合が50%ずつとなっています。
医師全体の平均年収は、厚生労働省が毎年公表している「賃金構造基本統計調査(令和4年)」によると、約1,428万円です。
ここから、病理医の平均年収は医師全体の平均年収と同じくらいといえます。
参考:リクルートドクターズキャリア|病理診断科の年収事情
厚生労働省|賃金構造基本統計調査(令和4年)
【年齢別】病理医の平均年収
ここからは年齢別に病理医の年収を見ていきます。
リクルートドクターズキャリアの「病理診療科の年収事情」によると、以下のグラフのようになっています。
参考:リクルートドクターズキャリア|病理診療科の年収事情
年収1,000万円未満と回答している割合は、30代で33%、40代で50%です。病理医も他の診療科と同じで、経験を積んだ40代以降になると、年収が増加する傾向にあるようです。
50代以降は役職に就く医師も増えることから、年収も大幅にアップすることが予想できます。
病理医の年収も勤務形態や地域によって変動する可能性があるので、転職を検討している医師は、勤務地や勤務形態も、よく確認しておくとよいでしょう。
病理医の年収は低い?
病理医の年収は「低い」といわれることが多いのですが、果たして本当に低いのでしょうか。
病理医の平均年収は1,000万円~2,000万円となっています。臨床医の平均年収は、約1,428万円なので、病理医の年収は臨床医と比べても同程度といえるでしょう。
また、日本病理学会が作成する「目指せ病理医!」によると、「臨床医と比較して給料が低いということはありません。」と記載されています。
日本病理医学会によると、全医師のうち病理専門医の占める割合は0.76%で、かなり人数が少ないことがうかがえます。貴重な人材のため、年収アップも目指しやすいかもしれません。
年収は経験値や勤務地、勤務形態によって変わるため一概にはいえませんが、臨床医と比べても低くなることはなく、むしろ年収が高くなる傾向にあるのが現状といえるでしょう。
参考:リクルートドクターズキャリア|病理診断科の年収事情
厚生労働省|賃金構造基本統計調査(令和4年)
日本病理学会|目指せ 病理医!
病理専門外来をもつ病院が少ない理由
病理医と他の診療科との平均年収の違い
病理医の年収を他の診療科と比較してみましょう。独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った、「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、診療科別の平均年収は下表の通りです。
診療科 | 年収 |
脳神経外科 | 約1,480万円 |
産科・婦人科 | 約1,466万円 |
外科 | 約1,374万円 |
麻酔科 | 約1,355万円 |
整形外科 | 約1,290万円 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 約1,267万円 |
内科 | 約1,247万円 |
精神科 | 約1,230万円 |
救急科 | 約1,215万円 |
放射線科 | 約1,103万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 約1,079万円 |
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構|勤務医の就労実態と意識に関する調査
手術の多い外科系の診療科や、当直やオンコールが多くなる産科・婦人科は年収が比較的高い診療科といえます。
一方で、病理医は平均年収が1,000万円~2,000万円と幅広いため、外科や産科・婦人科よりも高い年収になることも考えられます。
しかし、手術や当直が他の診療科に比べて少ない傾向にあるため、その分年収が低くなってしまう可能性もあります。しかし、病院規模や地域によって年収には幅があるので、手術がないからといって一概に年収が低くなるとはいえません。
病理医の仕事内容
病理医の年収について見てきましたが、病理医の仕事内容は具体的にどのようなものでしょうか。病理医の仕事内容は、大きく分けて以下のようなものがあります。
- 組織診断(生検および手術材料)
- 細胞診断
- 病理解剖(剖検)
それぞれの仕事内容を詳しく紹介します。
組織診断(生検および手術材料)
組織診断とは、病気の診断や治療のために、生体から採取した組織や細胞を顕微鏡で観察し、病変の有無や性質を判断することです。組織診断は、手術で摘出された組織から行う場合と、内視鏡検査で取った組織や皮膚から行う検査の2種類があります。
病理医は、生検や手術材料を受け取り、顕微鏡で検査し、報告書を作成して、臨床医に結果を伝えることが主な仕事です。病理医の組織診断は、病気の診断や治療の指針を提供する重要な役割を担っています。
細胞診断
細胞診断とは、病変部の細胞からがん細胞などの異形細胞を探し出すことです。
例えば、子宮頸がんの発見のために子宮粘膜から採取した細胞を検査します。
細胞診断によって、病気の原因を洗い出すことで適切な治療を患者に施すことが可能になります。
病理解剖(剖検)
病理解剖(剖検)とは、病気で亡くなった患者の遺体を解剖し、臓器や組織、細胞を直接観察して、病気の原因や経過、死因などを詳しく調べることです。遺体の解剖は、遺族の許可を取ったのちに行います。
生前の治療がどのくらい正しかったのか、病気がどのくらい進行していたのか、治療効果はどのくらい出ていたのかを検証します。事故や犯罪がからむ法医解剖とは違い、今後の医学の発展に必要な仕事です。
参考:日本病理学会|病理診断について
病理医が年収を上げるには
病理医がさらに年収を上げるためには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、以下の2つの方法をご紹介します。
- アルバイトをする
- 転職する
アルバイトをする
年収を上げるためには、アルバイトをするのがおすすめです。アルバイトとは数時間もしくは数日間、スポットで働くことを指します。
病理医のアルバイト求人に多いのは、非常勤求人です。非常勤求人が多い理由としては、病理科を持たない病院も多く存在することが挙げられます。
マイナビDOCOTRの求人情報を参考にすると、病理医のアルバイトの日給は7~10万円程度で設定されているケースが多いようです。
日給7万円のアルバイトを月20日稼働すると、月140万稼ぐことができます。これを1年間続けると、約1,680万円の収入が得られます。
医師全体の平均年収は約1,428万円といわれているので、勤務医の年収より200万円以上収入アップができる可能性があります。
しかし、病理医のアルバイトは先述したように非常勤が多く、雇用が不安定になりやすい点がデメリットといえます。収入を安定させるために、常勤の現場で働きながら、複数の現場をかけもちする必要があるかもしれません。
参考:マイナビDOCTOR|病理医とは?年収事情や仕事内容、病理医になる方法を徹底解説
転職をする
年収アップには転職もおすすめです。
病理医だけではなく医師全体にいえることですが、病院の規模や経営形態によって得られる年収が変わります。
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、医療法人、個人(経営)、その他法人の順で平均年収が高く、いずれも平均年収は1,000万円を超える傾向にあります。
また、病理医不足に悩んでいる地域への転職も、年収アップにつながるでしょう。
転職を検討する際は、病院の経営形態や転職地域もよく確認して転職活動を行うのがおすすめです。
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構|勤務医の就労実態と意識に関する調査
まとめ
この記事では、病理医の年収や仕事内容について、詳しく解説しました。
病理医は、病気の原因や治療の指針を明らかにするために、組織や細胞を観察する専門医です。病理医の年収は他の診療科と比べて低いというイメージがが、実際は働き方や地域によって、年収は大きく異なります。
病理医としての年収アップを考えているなら、アルバイトや転職がおすすめです。
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